2023年 自由のひろば年間表彰
●自由のひろば年間表彰 〈最優秀作品〉 加澄ひろし「惨劇」(6月号) 〈優秀作品〉 橋本敦士「銀河カブ」(7月号) 坂田敬子「信濃村開拓団」(3月号) 木崎善夫…
●自由のひろば年間表彰 〈最優秀作品〉 加澄ひろし「惨劇」(6月号) 〈優秀作品〉 橋本敦士「銀河カブ」(7月号) 坂田敬子「信濃村開拓団」(3月号) 木崎善夫…
●二〇二二年自由のひろば 最優秀作品・優秀作品 〈最優秀作品〉 すれ違う 滋野さち 大雪の日にスルリとすれ違った胞衣は 燃されて信濃川を流れて行ったのか。 シ…
●自由のひろば 夜明け 加澄ひろし 一瞬の出来事であった 黄金色の光のひろがりが たまらぬ眩しさを放ち 空のすべてを覆いつくした なにもかも、かがやきわたり …
●自由のひろば 鬼の酒盛り 村田多惠子 鬼は誰の中にも棲んでいて 普段はのんびり寝ながら暮らしているが 何かの拍子で目を覚まし 騒ぎ出す、暴れだす 大きくなっ…
●自由のひろば 夢の中の子供 壱貫亨治 暮らしを紡いでいた 坂道ばかりの街 嫌いだ嫌いだと 日毎夜毎に言っていた そんな月日も それなりの思い出として 過ぎる…
風の道 佐藤一恵 盛夏 日差し避け 車ごと逃げこむ 大きな木の下 ドア全開で 本ひらく昼休み 木蔭わたる風は 線路の向こうの 名も知らぬ白い花の香り 連れてく…
風のさかな ななかまど 雨が過ぎて ベランダに洗濯物を干す。 影が部屋中を踊る ぶわり。ふわり。バサリ、バサバサ。 風の中を泳ぐさかなのよう。 とりわけ大き…
●自由のひろば あの夏のこと 三村あきら 冷たいものを控えるよう医者にいわれた 生ビールの飲みすぎか腹をだして寝たからか 仕事を終れば炎暑のなかのたまり水 渇…
手ざわり 御供 文範 手ざわりのある 生活をしたい 五感でふれるざわつき いつものような さわれることができ こわれそうでも やわらかさがあり つつみこみ 抱…
研ぐ 北川ただひと 砥石を行き来する 錆びた肥後守 力をいれて研げば 錆が茶色に溶けていく 油断などとはいうまい 忙しさにかまけたともいうまい ほかでもない …
わたしという存在 むらやませつこ 台所の流しの隅で ナメクジがじとっと動いている すろうもうしょんで動いている 貼りつくように動いている 歩いた跡がぬめりぬめ…
おひとりさま 岡村直子 上品なことばにみせかけて さめた気色もちらつく 平成うまれの造語 「おひとりさま」は まさにわたしを言い当てている よるべなき身のおひ…
死んだふり 北川ただひと 狭い路地の奥にある木造アパートに その方は住んでいます ダンボールが積まれた六帖一間に 埋まるように暮らしています お元気でしたか と…
部屋 あさぎとち 部屋はたしかにそこに存在するが、なにも話さない。 窓から初夏の柔らかい風がそっと入ってくる。白いカーテンが少し揺れる。 外では緑色の草が茂り始…
潮騒の村 後藤光治 海沿いの村が寝静まっている 入り江には潮が満ち 月光が一本の光の道を作っている 浪が返す度に光はゆらめき 潮が騒ぎ海が鳴る 潮騒は風に乗り…
この世のものではない 今井くるみ 福島からきたことをかくして生きよう 何回も死のうと思った 放射線のばいきんって呼ばれた 賠償金もってるんだろうって 毎週お金…
うちのおばあちゃん 村田多恵子 気を使ってばかりいて 本音を言わず だけど言い出したら聞かない やっかいなひと 毎日死にたいと言いながら 病院が好きで 薬を欠…
深夜 橋本俊幸 認知症の父を捜しあて どこへ行くのかと叱れば 「家に帰る」という どこに帰るというのか 家を出て 夜は冷たく張りつめている 道を探すわけではな…
むらが消える 落合郁夫 山また山のなかのむら 村制施行前の一八八八(明21)年 一五六戸、八七二人 あと、戦争や恐慌にもまれ 第二次大戦では 村の5%、31人…
紙ヒコーキ サトウアツコ 競うことが使命だと 刷り込まれた紙ヒコーキ その背中に印刷された青空は 動かなくなった白い雲と 私の視線を結んだ後 山折り 谷折り …