2020年8月号 特集 平和

2020年8月号 特集 平和

●目次

特集 平和
谷川俊太郎 人生相談 4  草野信子 戦争責任 5  石川逸子 新型コロナの季節 6
上手宰 ワクを脱ぐ日 7  八木忠栄 ばかもの、よ。 8  くにさだきみ アベノマスク 9
杉谷昭人 総理のマスク 10  佐相憲一 玉川上水 11 若松丈太郎 ひとについて 12
青木みつお 遥かな径 13  白石小瓶 伯父 14  斗沢テルオ 墓碑に刻まれた戦地 15
玉川侑香 昼下がりの昼食 16  佐々木洋一 キミ 17  齋藤貢 泥の眼 18
田辺修 土の中 19  秋亜綺羅 平和 20  奈木丈 指で魔法が使えたら 21
照井良平 赤い目のカモメが鳴ぐ港 22  永山絹枝 チェルノブイリ 23
嶋岡晨 傘の唄 24  柴田三吉 水底の庭 50  北村真 地図 51
中原道夫 開かない窓 52  葵生川玲 新しい生活 53  浅尾忠男 マスク二題 54
呉屋比呂志 父母の地沖縄よ 55  荒川洋治 同性 56  檀上桃子 うさぎのなる木 57
芝憲子 沖縄 58  坂田トヨ子 時が止まったような 59  安水稔和 地名抄補遺二篇 60
野口やよい 雲雀 61  大塚史朗 匍匐訓練 62  三浦健治 「教訓Ⅰ」異聞 63
佐藤文夫 未来への道 64  安仁屋眞昭 平和とコロナ戦争 65  南浜伊作 行進の記憶 66
こまつかん 三十路のあなたへ 67  丸山乃里子 床屋まで 68  後藤光治 兵役 69
甲田四郎 故郷 70  山内宥厳 陽だまり 71  都月次郎 二〇二〇の桜 72
鈴木義夫 自粛 73  佐川亜紀 しろつめくさの伝言板 74  瀬野とし 筆 75

エッセイ
コロナの警告:すべての人々に安全な飲み水を  桜井国俊 40
おかげさまの果て――戦争と平和も含めて  伊奈かっぺい 42
仏レジスタンスの英雄の逝去に想う  緒方靖夫 44
国のお金は国民の命を救うために使おう  小森陽一 46
ぼくらは十五歳になったか?  田中和雄 48

 

詩と写真
3・11「復興」まだ  25  写真 かとうまさゆき 照井良平
詩 前田新 みもとけいこ おおむらたかじ 狭間孝 菅原健三郎 斎藤彰吾 田上悦子

 

評論 戦時下の火喰鳥――階戸義雄の詩と生涯  熊井三郎 76

 

ひうちいし 坪井あき子 清水マサ 滝本正雄 92

私の推す一篇 2020年7月号 95

奥田史郎小詩集  最初の世界周航者 88

詩作案内 わたしの好きな詩 伊藤信吉  城田博己 96

詩作入門 八、想像力  有馬敲 98

現代詩時評 インタビューへの答え方 上手宰 100
詩  集  評 「詩集」とその周辺を巡る 田辺修 102
詩  誌  評 糸の両端がつなぐ世界 宇宿一成 104
グループ詩誌評 グローバル経済の毒素コロナ 宍戸ひろゆき 106

自由のひろば 選・佐々木洋一/都月次郎/草野信子 108
御供文範/清水将一/耳成保一/立会川二郎/平和ねんじ/細田貴大/坂田敬子

詩人会議通信 117 ●表紙(「2011年韓国」)/扉カット 鄭周河 表紙写真あれこれ 柳裕子 120
編集手帳 120 詩人会議グループ連絡先一覧 表紙4広告


●詩作品

戦争責任  草野信子

義母(ルビ はは)は 六十を過ぎて
菜園の土地を借りた

鍬を じょうずに使った

運動場を耕して
芋や豆をつくったから と言った

戦時中 義母は
国民学校の先生だった

こどもたちに 水を運ばせ 苗を植えさせて
ほかには何も教えてやれなかった 一年生に
は軍人手帳の紙を折る作業があった お国の
ためにきちんと折りなさい 六歳のおさない
指に そう言った 戦争に負けて 校舎裏で
書類を燃やした 教科書に 墨も塗らせた

あげれば きりがなくある
それらは わたしの恥のようなもの
罪のようなもの

ふたりで 土に腰をおろすと
義母は そう言った

戦時中 二十代の先生だった

恥ではなく 罪ではなく
それは 深く負わされた傷であったのに

義母は
あやまちを詫びながら
ささやかな日常を 毅然と生きて
ひとりの〈戦争責任〉を果たそうとした

 

 

 

●編集手帳

☆コロナ禍がつづくなかでの「平和」の特集です。いま為政者は「自分ファースト」を喧伝していますが、そこには異論を排除する〝私利〟の闇がみえます。それは国民主権を国家主権に変えようとする動きです。会外のみなさんから作品をいただき、私たちは自由に多様に個的に、いまの平和の中身を示しました。
☆詩と写真は、東日本大震災、福島第一原発事故発生から九年を迎えた「復興」の現在をみつめたコラボです。かとうまさゆき、照井良平両氏に写真の提供をお願いしました。お礼申し上げます。
いまも故郷から避難を余儀なくされている方々は四万八千人以上いるといわれています。人口の減少、水産、農業、観光など低調がつづいてもいます。それにもかかわらず現政権は、原発再稼働を推し進め、東京オリンピックは、被災を騙って誘致したものです。怒りが湧きます。
☆熊井三郎さんの評論は、戦前から活動し、詩人会議会員だった階戸義雄氏の業績に光をあてたものです。すぐれた仕事に触発されます。(秋村宏)

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