2023年10月号 特集 食―待つ・実る・熟成の時間

2023年10月号 特集 食―待つ・実る・熟成の時間


●目次

特集 食―待つ・実る・熟成の時間
田辺修 樽の力
白石小瓶 田水張る頃
鈴木義夫 七月の朝
妹背たかし 待つこと
北島理恵子 ミルクスープ
小田切敬子 みんな必死だった
上岡ひとみ 父の皿鉢料理
田島廣子 聾啞の人との交流会
菅原健三郎 ミズ
斗沢テルオ 一人ぼっちの教室で
木村孝夫 海を飲む
上山雪香 鰯の唄
あべふみこ 庭のフキ
丸山乃里子 ねぎ坊主
三村あきら 梅雨の晴れ間
伊藤眞司 早苗田が秘める時間
たなかすみえ ふんは廻る
都月次郎 燻製の作り方
呉屋比呂志 猫を食う
高細玄一 海豚を喰らう
松村惠子 大蒜
佐藤和英 Longing Blue
織田英華 コーヒー
山﨑芳美 時は過ぎて
御供文範 グミジュース
小田凉子 木の実
赤木比佐江 ヤマボウシ
高嶋英夫 学校給食
わたなべとしえ 食から見える未来
清野裕子 家族の時間
春山房子 新しい景色
芝原靖 じさま
奥田史郎 教わった大根鍋

エッセイ
何を食べて…生きてきたか  彼末れい子
冬の仕事――キムチづくり  木村隆司
愛から生まれる豊かな「食」  塚田英子
雨の日の楽しみ  神流里子
暮らしの貧乏はしてもこころの貧乏はするな…と  滝本正雄
団塊の世代からの食事情  浜本はつえ

歴代運営委員長論 泥棒の詩とそこからの出発・城侑  三浦健治

報告 原水禁世界大会・長崎 田中茂二郎
書評 宇宿一成 四國光『反戦平和の詩画人 四國五郎』
佐々木洋一 秋野かよ子詩集『歳時記』
永冨衛詩集『思い出玉手箱』

見る・聞く・歩く 李徳圭

ひうちいし 狭間孝 池島洋 古久保和美

私の推す一篇

黒鉄太郎小詩集  ジャズ・エイジ/上海帰りのリルもそうだけど…/ドクターとおじぞう様/熱中症

四季連載 詩の見える風景・五度目の秋――新藤凉子さんの帰郷  杉谷昭人

詩作案内 わたしの好きな詩 鶴見俊輔  東海小磯

詩作入門 たしかめる  秋村宏

現代詩時評 AIは詩人を超えられるか 立原直人
詩  集  評 舐めてかかると意外と手強い詩集二冊 勝嶋啓太
詩  誌  評 詩を読んで、人とつながる 野口やよい
グループ詩誌評 詩と向き合う歓びに満ちた詩誌たち あらきひかる

自由のひろば (選・坂田トヨ子/中村明美/南浜伊作)
橋本敦士/佐藤一恵/植田文隆/天王谷一/坂田敬子/大野美波/和田平司/やまくま/井上韶鳳/柳瀬雅之

詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 冨田憲二
編集手帳


●詩作品

樽の力
田辺修

こころの樽に
ことばを寝かせておく
天使があらわれ
柔らかに磨きをかけてくれる
お裾分けは
貧しいけれどこころの奥の潤い
ウイスキー樽の原酒は
少しずつ減っていくけれど
潤いはいくら分けても
無くなることはない
そんな天使に逢えたらいいな
夢みるようなおはなし

樽に寝かすと時が深みを増す
木々の実も熟れ時には
ここちよいフェロモンが放たれ
柿が朱に実る頃は
医者たちが青くなるという
幾百万の命を奪われ誓った心を礎に
幾多の判例を身に納め
熟れた旨味を醸している「憲法」
善からぬやつらが妬み嫉み
これを弄(いじ)くろうと目論んでいる
不熟な壊変を狙う堕天使たち
樽に漬けタガを締め込んでやろう


●編集手帳

☆現代社会は多くの人から暮らしのゆとりを奪っています。「もはや、労働者たちの生きる時間だけでなく、身体のリズムと速度までが支配されるようになった」(エヴァ・ホフマン『時間』より)
☆編集会議で、今を生きる私たちの時間について考えてみようと話し合ううち、具体的な視点として食のテーマに辿り着きました。「待つ・実る・熟成の時間」とし、私たちの生を根本で支える食が持つ「ゆとり」の場を探ってみようと。そこで生まれる豊かな時間は身体リズムを回復させ、自然との共生、労働環境の歪みを見直す契機になるでしょう。
☆物故した歴代運営委員長の詩人論は四回目の「城侑論」。三浦氏が指摘しているように、所有の構造を問う「泥棒」詩、沖縄の基地返還闘争を描いた長編詩は、今こそ重要性を増しています。
☆九月号の「運営委員会報告」に記したとおり、今号より減ページとしました。この厳しさを超えて、充実した誌面作りを会員・会友の皆さまと共に目指していきたいと思っています。(柴田三吉)

コメントは受け付けていません。