2025年5月号 特集 私の環境問題―暮らしの場から

2025年5月号 特集 私の環境問題―暮らしの場から


特集 私の環境問題―暮らしの場から

乾葉子 インクラの滝
三村あきら 落葉松の風
佐藤和英 保護樹木
浦西登 樹
狭間孝 やえむぐら
加藤徹 四季
妹背たかし マスク
古野兼 リサイクル
呉屋比呂志 母猿の蛮勇
尾田貢 翻車魚
雨野小夜美 UV50+
春街七草 私たちが変われば世界が一つ変わる
たからきれい 巡環
池田久雄 免許返上
秋乃夕陽 破壊
たなかすみえ 鼓動ふたたび
坂杜宇 反戦デモ
河合恒生 チレボン・コール・カリョク発電所
おおむらたかじ 貝塚伊吹
木村孝夫 音

エッセイ
森番がいなくなった日  中村純
環境とは――一即多、多即一  本多寿

いまガザを思う
二〇二四年三月、祈りのパレスチナ絵画展  長沢美抄子
理不尽の根っこはどこにあるか  立原直人

報告
能登半島地震からの復旧・復興に向けて  山口修治
無常の覚悟――能登半島大地震、ひと月経った日  榊次郎

第58回詩人会議新人賞
選評
選考経過
詩部門 入選  あんのくるみ 追憶の八月
佳作  森山高史 うくらいな
貴田雄介 雨
桟檀寺ゆう 不定形の犬

一般詩作品
斗沢テルオ アンネへの手紙
いいむらすず 聞きたいこと
清水マサ 大志
上野崇之 豊後水道に春は巡りて
水崎野里子 大福もち
救愛 二拠点生活
小泉克弥 指輪
荻原梨絵 一ペソ硬貨のソネット

ひうちいし 池島洋 佐藤和英 山崎由紀子 他
新会員紹介 高倉正子

私の推す一篇

北沢秋恵小詩集  助走/いらない物と言われても/雨の日に/それからのこと/盛夏/子守歌/黄色い鳥のいる風景

詩作案内 わたしの好きな詩 中野鈴子  いいむらすず
詩作入門 二つ玉低気圧  荒波剛

現代詩時評 「荒地」と「列島」と「サークル詩」 後藤光治
詩  集  評 「春子は孵らなかった」 北島理恵子
詩  誌  評 だからこそ、詩を。 黒鉄太郎
グループ詩誌評 心の眼ですくい取る 青木春菜

自由のひろば (選・坂田トヨ子/中村明美/南浜伊作)
わたなべとしえ/橋本敦士/八田和代/藍眞澄/
大木武則/有原悠二/芦田晋作/高橋克知

郵便価格の値上げに反対する声明
詩人会議グループ一覧
詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 山本明良
編集手帳


特集詩作品

保護樹木  佐藤和英

路地を隔てた旧家が取り壊された
広い土地には数本の大きな保護樹木があったが
それらも伐採されることになった

近隣の公園にもなかなかない大きな木に
大型の野鳥たちがよくやって来ていた
朝早く聞こえてくる
ワカケホンセイインコの キーッ キーッ
オナガの ギューイ ギューイ という声

住宅街に生えている大木は一度に伐り倒せない
まず枝葉を切り落とし クレーンで幹の上部に
ワイヤーを括り チェーンソーで段階的に伐り
取っていく 何度かに分けて伐られた幹が無造
作に並べられる フォークショベルで切り株を
引き抜こうとするがビクともしない 根の周り
の土を掘り起こし 根を切り乍ら伐根していく

それら保護樹木がいつから生えていたか知らない
木は何も語らない
生えているその土地と運命を共にするだけだ

更地になった後は九階建ての集合住宅が建つという

忘れ去られていく
保護樹木のこと 住人のこと
宿り木としてきた鳥たちのこと

なかったことにしようとする
勝手に保護樹木と決めて 邪魔になれば伐り倒す
人間の身勝手さ

オナガたちが保護樹木のあった場所にやって来て
戸惑いながら木を探していたが
それきりどこかへ行ってしまった


●編集手帳

☆世界が押し進めるグローバリズムと経済至上主義。そして悲惨な戦争を止めることのできない痛ましい現状。こうしたなか、気候危機と環境汚染はすでにティッピングポイント(不可逆な臨界点)に迫っています。地球はいま圧力鍋に閉じ込められているような状態で、私たちが避難できる場所はどこにもありません。
☆今号はこれらの危機を一人ひとりの暮らしの場から考えてみようというものです。環境問題はまず身近な場での改善、その小さな積み重ねによって意識を高めていくことが大切でしょう。
☆第五十八回「詩人会議新人賞」を発表。詩部門は384篇の応募があり、表現へ向かう強い意気込みを感じました。入選のあんのくるみさん、佳作の森山高史さん、貴田雄介さん、桟檀寺ゆうさん、おめでとうございます。今後のさらなる飛躍を期待しています。
☆編集部の熊井三郎さんが諸事情により退任。お疲れさまでした。これからは地域編集委員として、引き続き本誌をサポートしていただきます。(柴田三吉)

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