2020年5月号 特集 戦争体験なし あり

2020年5月号 特集 戦争体験なし あり

特集 戦争体験なし あり
柴田三吉 あなたもひとりの 4  芝憲子 最後の手紙 5  妹背たかし 私の戦争 6
杉本一男 柳行李 7  田畑悦子 戦争遺児 8  山﨑清子 忘れない 9
光谷公男 不帰の家 10  上野崇之 「石を持て追わるる」ことなく 11
大塚史朗 戦中体験 12  田辺修 一房のバナナ 13
石関みち子 1学期に3度変わった学校 14  床嶋まちこ 追体験 15
浅尾忠男 詩二題 16  河合恒生 壺 17  いだ・むつつぎ 子豚のぶう太 18
北村真 タペタム 19  みもとけいこ 「自衛隊員」募集してます 20
林ひろ 島で生きる 21  いいむらすず 言わぬ言葉 22  桜井くに子 雑穀御飯 23
奈木丈 写真の居場所 34  勝嶋啓太 父も母も子供の頃の話をしたがらない 35
きみあきら 国賊呼ばわり 36  池澤眞一 父の話 37  阪南太郎 友よ 38
山越敏生 読み伝える本読み 39  たなかすみえ 守りたいのは 40
斗沢テルオ 同時代の二人 41  坂杜宇 知りませんが 42
滝本正雄 不当に逮捕された母 43  田上悦子 戦争終結 44  春山房子 秋彼岸 45
小森香子 2020年 早春 46  清水マサ 城下町 新発田にて 47  草倉哲夫 ロマ 48
佐相憲一 ある年代記 49  志田昌教 若人へ 50
芝原靖 これからの戦争を知らない子どもたちへ 51  呉屋比呂志 砂に埋もれて 52
安仁屋眞昭 戦後終わらぬ 沖縄 どうして くれる! 53

エッセイ
戦争体験のはざまで  近野十志夫 24
沖縄「慰安所」第一号 南大東島を訪ねて  鈴木文子 28
語られていない言葉  瀬野とし 30
「戦争を知っていますか」と問われたら  目次ゆきこ 32

小論 少年と軍歌――八十八歳、戦争の記憶  宮城島正博 54

 

新人賞 第54回詩人会議新人賞 63   総評 73  選評 74  選考経過 75
詩部門 入選  戸田和樹 かくれてへんかー 64
佳作  キムラカエデ 灰春 66  感王寺美智子 あたらしい力 68
諏訪晃子 ちっちゃいばあちゃん 70
評論部門 佳作  田中淳一 塔和子の尊厳 72

 

嘲流 熊井三郎 さくら変奏曲 62

ひうちいし 福地秀子 あさぎとち 池島洋 滝本正雄 楊原泰子 ねなしかづら 雪野佐喜子 杉本一男 80

見る・聞く・歩く 田上悦子 85

清野裕子小詩集  柿を持つ少女/モデルの夢/朝の自画像 76

詩作案内 わたしの好きな詩 藤川幸之助  狭間孝 86

詩作入門 五、短詩のこと  有馬敲 88

現代詩時評 戦争の記憶と憲法 柴田三吉 90
詩  集  評 思い切って言葉を切る 魚津かずこ 92
詩  誌  評 盃中の蛇影 宇宿一成 94
グループ詩誌評 こんにちは。よろしく詩誌さん 宍戸ひろゆき 96

 

自由のひろば 選・佐々木洋一/都月次郎/草野信子 98
木﨑よしお/御供文範/立会川二郎/北野邦生/村口宜史/小田凉子/小篠真琴/坂田敬子

寄贈詩誌・詩書 107 詩人会議通信 108 読者会報告 3月号 河合恒生 115
●表紙(「2017年ベトナム」)/扉カット 鄭周河 表紙写真あれこれ 柳裕子 116 編集手帳 116


●詩作品

あなたもひとりの
柴田三吉

――戦跡と呼ばれる地を
いくつ歩いてきただろう

きょう 恩師が通った旧制中学跡を
古い地図を頼りに探し当てた

石碑のある急坂
初夏の夕暮れを 若者たちが
汗して駆け上がっていく

(爆心地から八百メートル
その日の在校者六十一名 生存者三名)

闇が世界を覆った瞬間を あなたは
書きかけた方程式を背にして語った

巡り合ってからの歳月
わたしは変色していく暦を
その日に向けてめくり返してきた

あなたもひとりの戦跡だったのだろう
石畳を割り 地表を削れば
乾くことのない血が滲んで

戦跡と呼ばれる地に
いまも ひとが立っている
記憶が立っている

熟れた果実のように剥かれ
果肉を啜ってもらおうと


●編集手帳

☆特集は「戦争体験なし あり」です。戦後75年経って、私たちのなかで戦争はどんな位置を占めているのでしょう。会員の約100人位が75歳以上ですが、兵士としての戦場体験を語った人はいません。けれど戦中、戦後の暮らしのなかにある戦争の中身、平和を希求する願いを表現しています。それは戦争を拒む、多様で個的な強い意志です。
☆宮城島正博さんの「少年と軍歌」は、歌が戦争遂行にとって大きな力をもっていたかを作者自身の問題として書かれ「戦争と歌」の問題を考えさせられます。
☆諷刺詩を掲載する〝嘲流〟欄を新設します。依頼はしませんが、ふるってご送稿ください。36行以内(題除く)です。
☆第54回詩人会議新人賞の詩部門、評論部門が決まりました。63頁参照。今後の創造のいっそうの深化を願っています。なお、ここ七年の間に、白石小瓶、うえじょう晶、高嶋英夫、大西はな、秋野かよ子、倉山幸一、後藤光治、野口やよい、檀上桃子さんらが受賞され、会員になられています。(秋村宏)

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