2020年4月号 特集 忘れない

2020年4月号 特集 忘れない

●もくじ

特集 忘れない
玉川侑香 震災から二十五年・小景 4  佐々木洋一 わたなべたろう 5
魚津かずこ もどかしい 6  岡田忠昭 声の礎石 7  妹背たかし 石を拾う 8
狭間孝 オレンジ色の十五夜 9  松田研之 おい、おるか 10  梅津弘子 「槍」から 11
後藤光治 歳月 12  大釜正明 この坂を 上っている 13  田辺修 うつろう花 14
武田いずみ 家路 15  佐藤誠二 マタニティにはモーツアルト 16
斎藤彰吾 ラグビー、世界へ 17  府川きよし 身について 18  永井秀次郎 印象場所 19
永山絹枝 冬の菜の花 20  かわかみよしこ ミサオさんの最期 21
おおむらたかじ 国防色の半ズボン 22  いだ・むつつぎ 子どもたちは渡り鳥のように 23
松村惠子 待たせる 24  伊勢薫 私の好きな人たち 25
上手宰 自分に気付かれる日 36  前田新 忘れない 37  菅原健三郎 母の独り言 38
田島廣子 私が子どものころ 39  丸山乃里子 その日の午前 40  山野次朗 山桜 41
宇宿一成 揺れる鏡 42  横田重明 夢のはなし 43  伊藤眞司 虫 44
山田よう 未来のために忘れない 45  大嶋和子 その人 46
いわじろう 忘れないでね と 47  遠藤智与子 対岸より 48  大道和夫 扉の裏側 49
青井耿子 眠る前に 50  白根厚子 忘れていない 臭い 51  髙嶋英夫 いつまでも 52
大西はな ビラをくれた人に 53  青木みつお ライチョウ 54
秋野かよ子 伝達 55   写真 鄭周河 31

エッセイ
忘れない忘れられない  照井良平 26
千曲川決壊  小林その 28
映画と講演のつどい  山崎由紀子 32
原発事故による被曝の恐怖と「核のゴミ」――原発の隣り村に居住して  滝本正雄 34

 

おはなし 家族を描く――木島平にて  清野裕子 56

 


鈴木義夫 朗読 64  西明寺多賀子 石蕗の芯のように 65  阪南太郎 記念の一冊 66
まえだ豊 新聞を読むために図書館に 67  檀上桃子 瞳の扉 68
里崎雪 歌は繋がれて行く 69  水崎野里子 首里城炎上 70  宮沢一 錆びる 71

書評 南地心爽詩画集『Seventy』  青木みつお 80
藤原義一著『槇村浩が歌っている』  三浦健治 80

ひうちいし 安仁屋眞昭 立石百代子 78

新入会作品 平湯真人 鈴木洋 72

山内宥厳小詩集  こころ/転ぶ/彩雲/サラダの皿/ころも 74

地下室の窓 歯が外れた――2020年の年頭所感01  徐京植 82

詩作案内 わたしの好きな詩 村田正夫  勝嶋啓太 86

詩作入門 四、日常・笑い  有馬敲 88

現代詩時評 敗北の先にあるもの 上手宰 90
詩  集  評 不条理な今を照射する 田辺修 92
詩  誌  評 書きつづけることへの励まし あらきひかる 94
グループ詩誌評 最終連での飛躍 洲史 96

 

自由のひろば 選・草野信子/佐々木洋一/都月次郎 98
雨野小夜美/木﨑よしお/平和ねんじ/落合郁夫/北野邦生/御供文範/坂田敬子

詩人会議グループ一覧 81 寄贈詩誌・詩書 107 詩人会議通信 109 詩作2020報告 編集部 114
読者会報告 2月号 阪本正二 115 ●表紙(「2017年ベトナム」)/扉カット 鄭周河
表紙写真あれこれ 柳裕子 116 編集手帳 116


●詩作品

わたなべたろう  佐々木洋一

わたなべさんの隣にはさとうさんが住んでいて
その隣にはちばさんが住んでいて
向かいにはすずきさんが住んでいて
おはよう とか いい天気 とか
かわりないか とか ぐあいどうか とか
蕨が採れたので食べらいん とか
蛸を獲ってきたので食べてみて とか
そんなふうに毎日が通り過ぎ
毎日が通り過ぎる中で不幸があれば
その度にお祈りする

さみしいのか カモメ
家のない風景の隅にカモメの声はけたたましい
むさくるしいか クモ
崩れかけた家の真ん中にクモの糸が垂れ下がる

わたなべさんの隣にはさとうさんがおらず
その隣にはちばさんがおらず
向かいにはすずきさんがおらず
だいいちわたなべさんがいない
いい天気なのに 天気に拘わらず
わたなべさんがいない

わたなべさん
わたなべさんをたずね
カモメがわたなべさん わたなべさん

ワタナベタロウ
と刻まれた
わたなべさんではないワタナベタロウの碑の前で
お祈りする

わたなべさん
何処へいってしまったのか
竜宮城からまだ帰ってこない
*わたなべたろう(仮名)

 

 

●編集手帳

☆特集は「忘れない」です。人生の折々に忘れられない出来事、心のなかに深くある〝なにか〟を書いていただきました。〝きのう 曲がっていたはずの道が/きょうは 直線道路になっている〟。それが阪神・淡路大震災から二十五年の街の〝小景〟です(玉川侑香)。〝ワタナベタロウ/と刻まれた/わたなべさんではないワタナベタロウの碑の前で/お祈りする〟(佐々木洋一)にも、東日本大震災があります。それぞれ、言葉に作者の生がぶつかる時代が映しだされているのです。全作品、そうです。
☆清野裕子さんの「家族を描く」は、昨年の夏の詩の学校(長野県木島平)でのおはなしです。生と死にふれる詩作の源泉がみえてきます。
☆新型コロナ対策について一言。できるだけ早く希望者全員に、健康保険でPCR(ウイルスを高精度で検出)を受けられるようにしてほしい。民間の力を借りれば出来るとのことだ。後手後手に回っている政府の対策。軍事費より人間の命に予算を使いなさい。(秋村宏)

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