2021年6月号

2021年6月号


特集 家族 友
柴田三吉 かき分けても 4  芝憲子 国吉さんの家 5
なかむらみつこ ずっとオンナだった 6  彼末れい子 手のひらの系譜 7
佐々木洋一 ひなた 8  宇宿一成 木瓜の季に 9  丸山乃里子 小さい花・大きい花 10
坂田トヨ子 しょんなか 11  大道和夫 空を見る猫 12  玄原冬子 イルカ浜を 13
高田真 片口 14  中林千代子 願い 15  水崎野里子 佐藤文夫さん追悼 16
奥田史郎 四歳の冒険 17  志田昌教 愛憎家族 18
上野崇之 〝引き揚げ〟の記録から 19  清野裕子 虹の写真 20
工藤美春 歌う友だち 21  妹背たかし 後悔 22  池田久雄 夫婦の年表 23
近野十志夫 母がホームに入りまして 《面会》 24  大嶋和子 友のような 25
武田いずみ 急逝 26  春山房子 春彼岸 27  梅津弘子 PCR検査を 28
はなすみまこと ’21年3月11日午後2時46分 29  加山みどり 空気 30
飯泉昌子 ピアノライブ 31  上山雪香 狐の嫁入り 32  南浜伊作 村祭り 33
上岡ひとみ あの頃のまま 34  竹井みよ子 明かり 35  秋山陽子 晩夏光 36
勝嶋啓太 家族だもの と母は言った 37  小田切敬子 ひげ家族 38
たなかすみえ ここ 39  織田英華 あの子 40  魚津かずこ ずっと、そこに 41

エッセイ
家や家族や先祖の話  河合恒生 42
早春の太陽/玄冬の月  白石小瓶 44
お母さんへ  犬伏久美子 46
コロナで変わった  田島廣子 48
息子たち  戸田志香 50
最後はお洒落な詩人に  笠原仙一 54

 

 

第49回壺井繁治賞
白根厚子詩集『母のすりばち』
永山絹枝著『魂の教育者 詩人近藤益雄』
受賞詩集抄 57 受賞のことば 63・74 受賞著作抄 68 選考経過・選評 79
暮らしから響く反戦の声  瀬野とし 64
実践を通しての手厚い評伝  南浜伊作 75

 

日誌 思うこと、考えること  金蔵拓郎 82

 

嘲流 くにさだきみ 「ガースーちゃん」の「ガースーマスク」 94
榊次郎 兵器納入者と幕僚監部の会食 95

 

私の推す一篇 2021年5月号 114

くらやまこういち小詩集  切りとった障害/水虫知らず/半年かけ通り抜けたトンネル/最後の武勇伝/ハンサムなくらやまさん 96

四季連載 詩の見える風景・みたび夏――復活したアーモンド・アイ  杉谷昭人 100

詩作案内 わたしの好きな詩 谷川俊太郎  檀允心実 102

詩作入門 散文で記さなければいけないものを  草野信子 104

現代詩時評 言葉のふりをして 上手宰 106
詩  集  評 深く感じる人の心と存在 魚津かずこ 108
詩  誌  評 自分にまだある力を使って光のさす方に 高田真 110
グループ詩誌評 真っすぐに伝わってくる作品 上岡ひとみ

自由のひろば 選・おおむらたかじ/草野信子/都月次郎 115
立会川二郎/新見かずこ/佐藤一恵/御供文範/木崎善夫/サトウアツコ/ななかまど/村口宜史

詩人会議通信 124 ●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128
ビキニデーin高知報告集より 表3


●詩作品

かき分けても  柴田三吉

若い語り部さんだった

まだ始めたばかりですと
背後の丘に立って海岸を指さした

部活を終えて帰る途中、河口のマンション
に逃げ込みました。海は十二階の屋上を越
えてきましたが、柵にしがみついて耐え、
凍えながら一夜を過ごしました。

震災の直後 わたしはその建物を
瓦礫の道から見上げていた
屋上でうずくまる少女の写真も

体育館で別れた友だちは見つかっていませ
ん。いちばんの仲よしでした。

見下ろす町の跡は
津波の高さを測る建物もなくなり
かさ上げ工事が進んでいる

捜し出せなかった親友
彼女を抱きしめられなかった家族
かき分けても かき分けても

黒い盛り土が歳月を覆っていく
重機の音はここまで届かず
静寂を揺らす ひばりの囀り

――ご無事でよかったです
あの日のあなたに そして
あの日からのあなたへ

 

 

●編集手帳

☆今月の特集は「家族 友」です。多くの人が、家族や友や他者とのつながりを確認する、つまり自身の生きる意味をたしかめようとしています。そしてよくみると、その温もり、愛などの背景に、国家の、権力者の私利私欲が浮かんでみえます。それは私たちが暮らしの現実を書いている力なのです。
☆金蔵拓郎氏の日誌は、鹿児島詩人会議「詩創」51からの転載です。コロナ禍のなかでの思いが興味深く〝人類は地球の癌細胞〟という言葉など、重く、考えさせられます。
☆第49回壺井繁治賞が決まりました。白根厚子詩集『母のすりばち』、永山絹枝著『魂の教育者 詩人近藤益雄』(56頁参照)です。詩集、評論の受賞は、第39回以来のことです。白根さんの暮らしを描いた現実感と、反戦の思い。永山さんの近藤益雄の障害児教育の生涯を綿密に調べた探求心と実践力。共に力がこもっています。そして二冊の受賞を可能にした壺井繁治賞基金に賛助してくださったみなさまにお礼申し上げます。(秋村宏)

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