第38回(2004) 詩部門佳作入選 髙井俊宏

第38回(2004) 詩部門佳作入選 髙井俊宏

詩部門佳作入選

高井俊宏
1989年東京都生まれ。
栃木県小山市立第三中学校二年生。


受賞のことば
ぼくの詩が賞に入って嬉しいです。毎日水泳ばかりやっていて、頭の中は少しでも速いタイムを出すことばかりです。そのせいか、姉から知らせを聞いたとき、どんな詩を書いたのかを思い出せなくて、人事の様でした。言葉をかっこよくしようとか、上手な詩にしようとかを考えないで、背伸びしなかったのがよかったのかなと思っています。水泳の練習で疲れるけれど、これからも詩を書きます。有り難うございました。


父  高井俊宏
「お前の都合に合わせるのはもう終わりだ。」

父が低く言った

ほとんど

家にいないくせに

ぼくの事など

見ていないのに

 

小学校の頃

一緒にサッカーや

キャッチボールを

してほしかった

外国にいたから

仕方ないし

ぼくが頼まなかったのだから

気づかなかったのだろう

でも

誘ってほしかった

「サッカーやるか。」

「キャッチボールやるぞ。」

母とけんかすると

父は怒った

ぼくだけでなく

母にも

同じように理由を聞き

同じように注意した

 

父は大きくて

少し怖い

母にはいくらでも

いい返せるのに

父の前では

何も言えない

つい

いい返したある時

父は

ぼくの言葉に

耳を傾けた

そして

「じゃあ

どうすればいいと思う?」

とぼくに言った

 

父は頭ごなしにしからない

ぼくの話しを

黙って聞いてくれる

側にいなくても

ぼくのことを

本気で考えていた

 

母とけんかをして

ひどい事を言うたびに

父とぼくは話しをして

どんどん

近くなっていった

サッカーやキャッチボールは

しなかったけれど

ぼくは素直に

父と話せるようになった

 

父と話しをするたびに

母とのけんかが

なくなった

不思議なくらいに

落ち着いて

物に当たることも

なくなった

 

父は今でも

ほとんど家にいない

いても仕事ばかりしている

けれど気持ちは側にいて

ぼくのことを

見ていてくれる

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