2023年9月号 特集 多様性を生きる―差別を超えて

2023年9月号 特集 多様性を生きる―差別を超えて


特集 多様性を生きる―差別を超えて

渋谷卓男 ひとつ話
魚津かずこ It’s OK.
なたとしこ 少年が
竹井みよ子 やさしい吊革
斗沢テルオ 婆っちゃは2年生
神流里子 おさよさん
救愛 市役所車椅子職員
遠藤智与子 愛惜
青木みつお リモコン
春街七草 ある日遭遇したヘイトクライム
池島洋 差別と偏見を乗りこえて
赤井紫蘇 選択の舞台
あさぎとち 魂の詩
むらかみみの里 フラワーデモ 川越
妹背たかし まだ カミングアウトできていませんが
宍戸ひろゆき 女だったらよかったと思ってた
床嶋まちこ 多様性を生きる
いいむらすず 個人という尊厳
古久保和美 母系社会に戻ったら
呉屋比呂志 姉の嘆き
伊藤眞司 なんとかかんとか
三村あきら 膝が笑う
池田久雄 変人
あらきひかる アカの子
永冨衛 風船
河合恒生 南の母たち

エッセイ
多様性尊重社会への途上で  冨岡悦子
セクシャルマイノリティと居場所としての文学  高田真
声なき声を挙げる人たち  宮島牧人
普通ってなんだろう  櫻井美鈴
1人も取り残さない社会を  加藤徹

二〇二三年詩人会議全国運営委員会   記録
参加者の感想 いいむらすず 遠藤智与子 草野信子
坂田トヨ子 斗沢テルオ 奈木丈

詩の鑑賞会
ネルーダと友人たち  荻原梨絵
「原子へのオード」  荻原紗希
五〇年忌を迎えるパブロ・ネルーダを讃える  田辺修

エッセイ  「北」シェイマス・ヒーニーと北畑光男「飢饉」  水崎野里子

追悼 小森香子さん  南浜伊作

私の推す一篇

一般詩作品
照井良平 満月の鼓動
佐々木洋一 あいまいもこ(のだろう)
御供文範 ありがたきことよ
北村真 澱川橋梁
乾葉子 馬を洗って…
松田研之 あくろすてぃっく
熊井三郎 合評会百態
中村明美 水辺の街で

書評 宇宿一成 上手宰詩集『二の舞』 飯泉昌子詩集『いつものように』
佐々木洋一 木村孝夫詩集『放射能は眠らない』

ひうちいし まだらめメンデルソン三保 青井耿子 秋野かよ子 ねなしかづら 永山絹枝 青木みつお 小森陽一

野川ありき小詩集  樹や花 鳥や蝶/私は数ではない/姉の電話/花三題

詩の実作教室 黙っていても  塚永行 ●講師作品批評  清野裕子

地下室の窓 真実を語り続けよう――韓国でのコラム連載を終えるにあたって  徐京植

詩作案内 わたしの好きな詩 峠三吉  刀根蛍之介

詩作入門 心が弱っている日は詩を書かない。  武田いずみ

現代詩時評 映像が映したものと映せなかったものと 北村真
詩  集  評 「此処ではない」 北島理恵子
詩  誌  評 〝うつくしい涙〟が多すぎる 黒鉄太郎
グループ詩誌評 しなやかに生きるそして書く あらきひかる

自由のひろば 選・南浜伊作/坂田トヨ子/中村明美
わたなべとしえ/大木武則/坂田敬子/和田平司/小林信次/有原悠二/橋本敦士/加澄ひろし

詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 冨田憲二
編集手帳


●詩作品

ひとつ話
渋谷卓男

昔はバスのほうやってたんです
駅からこっちは労務者が多くて
冬は窓閉めてるでしょう
乗ってくるとものすごかったですよ
汚れた地下足袋ね
あれの臭いが充満して

運転してて危ないこともありました
道路に座り込んだり寝そべったり
うちの同僚なんか頭ひいちゃったんです
あ、やっちゃったー
そしたらぴょこん、って
起きて行っちゃったんですって
タイヤが浮いたんですかねえ
それにしたって
よっぽど石頭だったんだろうって


復興の手足となった人々
一日、一年の大半を
土に近いところで過ごした人々
そのまま地べたに捨てられた人々が
一生の終わり近く
ようやく世間の口に上る

ちょっと笑いの取れる
ひとつ話として


●編集手帳

☆現在、日本でもようやく生の多様性を巡る議論が盛んになっています。とはいえ一部の旧守的、排他的な層の妨害によってこの課題は足踏みしています。人権の軽視と差別意識。ここには他者に対する愛の欠如のみならず、差別をする人々自身の孤独、愛の欠乏が反映されているのではないでしょうか。一日も早い法の整備を求めますが、詩を書く私たちは、言葉の豊かさをもって、多様な愛を育んでいけたらと思います。
☆会外から、詩人でドイツ文学者の冨岡悦子さん、難民の援助に携わっている牧師、宮島牧人さんのお二人から、差別の根源を問うエッセイをいただきました。また会員からは、自身の生と他者との関わりを描く作品、エッセイが寄せられました。ここにも古い壁を壊して愛を求める、深いまなざしがあります。
☆六月に行われた全国運営委員会の報告を掲載しました。参加者全員から、詩人会議を継続発展させていこうという意欲的な思いが語られ、編集部も大きな励ましをいただきました。(柴田三吉)

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