2023年 3月号 特集 東日本大震災12年東北からの発信

2023年 3月号 特集 東日本大震災12年東北からの発信


特集 東日本大震災12年東北からの発信

齋藤貢 新しい恐怖
木村孝夫 十二の節目の中で
前田新 福島核災十二年目の春
小林真代 山
あべ和かこ 暖かな光
二階堂晃子 怪しい
みうらひろこ 明日への物語
わたなべえいこ 防潮堤が遮る
岩田武昭 かさぶた
呉屋比呂志 水没
平山千春 コラージュ of Memory
横澤和司 静寂の通りに 鎮魂の海は
菅原健三郎 閖上の新しい風景
佐藤洋子 星になれない光が小聲を零していく
千田基嗣 封印を解く かのような
小熊昭広 通り過ぎる
鈴野未央 詩二篇
本堂裕美子 こたえのない質問
松﨑みき子 りんご畑
妹背たかし いま やらねば

エッセイ
原子力災害伝承館の「語り」について  広重隆樹
神話ではない世界の未来のために  星隆雄
「関係住民」として通い続ける――東京から福島へ  根本敦子
震災と原発事故  齋藤貢
被災地と未災地の狭間で  斗沢テルオ
被災地の三陸を訪ねる  照井良平
故郷に甦り、鎮められる魂――丹野文夫についての断章  竹内英典
宮城県南三陸町からの記憶と現在  佐々木洋一
学ぶこと、出会うこと――震災と原発事故について学ぶ高校生たちの旅  津田幸介
「核のゴミ」処分場の事故責任「不在」のカラクリ  滝本正雄

一般詩作品
志田昌教 続く原発再稼働
大久保せつ子 身一つで
梅津弘子 「ふくかな」の仲間と共に
春街七草 無主地
川澄敬子 ちぢらんかんぷんぷーん
三浦千賀子 月子さん
上岡ひとみ おじさんと私と子猫
いいむらすず 約束
清水マサ 友よ
松村惠子 顔
白根厚子 初心者
水崎野里子 梨泰院で死んだあなたへ
山田よう ツクバエクスプレス
松田研之 無題

長谷川節子小詩集
春を待つ花とふるさと/戦争と家族/疎開先の家 岩手で/肺結核は家系か/母親と子どもたち/出会いと旅立ちのふるさと 78

 

詩人会議グループ詩誌作品集6誌  選 秋村宏
宮沢一 血、鉄のにおい
鈴木ノリ子 ありがとう
大嶋和子 鉛筆が持てない
比嘉名進 想えば…一九四三年
望月昭一 馬鈴薯を植える
藤原睦明 たいふうがきたひ

詩人会議と私
佐川亜紀 芝憲子 白根厚子 鈴木太郎 清野裕子 瀬野とし

書評
佐々木洋一 永山絹枝『児童詩教育者 詩人江口季好』
後藤光治詩集『記憶の杜』

ひうちいし
清水マサ 澤田章子 大西はな 清水真理

見る・聞く・歩く 玄原冬子

私の推す一篇 2023年2月号

四季連載
詩の見える風景・五度目の春――「詩人会議」創刊号の記憶  杉谷昭人

詩作案内
わたしの好きな詩 池井昌樹  上手宰

詩作入門
自然、虫、小動物、その美しさに  いだ・むつつぎ

現代詩時評
壁詩「オモニのうた」―ウトロを生きる、ウトロで出あう― 北村真
詩  集  評
「花降る朝に予鈴が聞こえる」 北島理恵子
詩  誌  評
ペンは他人の一言で走ることもある 黒鉄太郎
グループ詩誌評
あのころも 今日も 書くぞ 河合政信

自由のひろば (選・南浜伊作/坂田トヨ子/中村明美)
有原悠二/坂田敬子/小林友子/村口宜史/加澄ひろし
/三村あきら/植田文隆/乾茂雄/坂井傑

詩人会議通信
読者会報告 2月号 小田凉子
●表紙/扉カット/表紙のことば 冨田憲二
編集手帳


●特集詩作品

十二の節目の中で
木村孝夫

物干し竿に一年刻みの節目が十二できた
喜ぶべき数ではなくまだまだ足りない
汚染水の問題、中間貯蔵施設の問題
帰還困難区域の問題、廃炉の問題などが
ぶら下がっていて
無表情でぶらんぶらんと揺れている

帰還者は増えない、あの手この手で誘うが
帰らないと決めた避難者の数は減らない
復興に前向きな若者の姿が放映された
その一方で放置されたままの荒れ地の
背丈を越える雑草なども放映された
避難者は視角から何かを取り出し考えている

インフラの充実、未来を見据えた街づくり
これらが物干し竿にぶら下がっているものに
押しつぶされるような姿で透けて見える
撮影者はバランスよくその姿を切り取って
放映しているのだろうが漏れるものもある

突然の原子力発電所の二十年延長の話に
みんなが驚いた、運転期間の上限撤廃と
停止した期間を上乗せする発想は
いちえふのメルトダウンから
何も学んでいないままでの原発回帰だ
廃炉を次世代型原発に建て替えると言う

まだ汚された古里は元の姿に戻っていない
物干し竿にぶら下がるものがまた増えた
その重さに物干し竿は耐えられるのだろうか
折れる事はないが心が折れる
復興の道半ばに咲く花をまだ見ていない


●編集手帳
☆東日本大震災から12年。津波被害からの再生、原発事故の現状を知るため、今号は被災地の声を聞く特集とし、宮城県の地域編集委員・佐々木洋一氏と、福島県在住の詩人、齋藤貢氏にお世話をお願いしました。作品とエッセイをお寄せいただいた皆さまにお礼申し上げます。
☆12年が経過したとはいえ、被災した方々の暮らしはいまだ困難に満ち、心の傷も癒えていないことが強く伝わってきます。さらに、廃炉や除染が進まないなか、政府は既存原発の再稼働、運転期間延長、新増設、汚染水の海洋投棄を目論んでいます。どれも新たな危険、地球規模の環境汚染をもたらす暴挙です。
☆一方、被災地以外ではこれらへの関心が薄れてきています。忘却から風化へ至る道を食い止めるため、詩を書く私たちは一層目を凝らし、新たな想像力を鍛えていかなければならないでしょう。かつて井上ひさしは「部外者ではなく当事者たれ」と語りましたが、今回「東京高校生平和ゼミナール」の取り組みに清新な意志と希望を見ました。(柴田三吉)

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