2022年5月号 特集 いま私が書く詩

2022年5月号 特集 いま私が書く詩

●もくじ

特集 いま私が書く詩

中村明美 あなたへ
勝嶋啓太 こうやって世界は滅んでいくのかもしれない
熊井三郎 席取りゲーム
木村孝夫 時の糸
都月次郎 鬼喰らわん神異聞
櫻井美鈴 トシドン
丸山乃里子 桜
おおむらたかじ 雪ん中
岩堀純子 聞こえない、言葉が
玄原冬子 福音
いだ・むつつぎ ヒメジョオンの花のような女の子
小田凉子 空白のパズル
鈴木義夫 弁当
上野崇之 いま、教育と〝怒り〟を書く
立原直人 電凸
田辺修 火付盗賊改方
西明寺多賀子 春の草
いわじろう 十年位止まってくれないかな
南浜伊作 秘かな悦楽
芝原靖 灯台
浦西登 樹
呉屋比呂志 九月の終わりの虹の会
秋野かよ子 死にかた
春山房子 残されて独り
三浦千賀子 介護を受けるということは
田島廣子 施設でクラスター発生
かわかみよしこ 春の嵐
水崎野里子 撃て! タンバリンを
妹背たかし 今では、ぼくたちと
比留川美津子 花色の旗
田畑悦子 地球
檀允心実 涙のお守り
伊藤眞司 となりの のりこさん
奥田史郎 再会
松田研之 風光る
玉川侑香 「仙人」とよばれた男
くらやまこういち 引き受けたこと 引き受けること
床嶋まちこ 気持ちのいいおつき合い
あべふみこ 魔法の水
畑中暁来雄 前日
山口賢 私はうたうよ
榊次郎 眠れない夜
清野裕子 うた
光谷公男 私の新春
河合恒生 詩人会議
白根厚子 書くって
佐々木洋一 ごりごり
清水マサ 雪道
河合政信 死にたくない
瀬野とし 風の音

エッセイ
茨木のり子と韓国詩  佐川亜紀

言葉
戦争反対! ロシアのウクライナ侵攻に抗議します

おはなし
核兵器の終わりの始まり(下) ――核兵器禁止条約発効後の世界と日本  川崎哲

新人賞 第56回詩人会議新人賞 (総評・選評・選考経過)
詩部門  入選  御供文範 役回り
佳作  いいむらすず 肚を据えた日
やまもとれいこ 涙を流すキリン
飯干猟作 歩兵銃
評論部門 入選  石橋直樹 パウル・ツェランのいない世界で――帰郷をめぐって

 

詩人会議グループ詩誌作品集
松尾静子 少女A
工藤美春 ニラ
斉藤範雄 赤い海

書評
宇宿一成 柴田三吉詩集『ティダのしおり』
三浦千賀子詩集『リュックの中身』

ひうちいし
宮本勝夫 渡部唯生 狼煙通信より 塚田英子 編集部

野口やよい小詩集
鵜/ふくらはぎ/沈黙/夜風

私の推す一篇 2022年4月号

詩作案内 わたしの好きな詩 八木重吉  あさぎとち

詩作入門 詩を書くって楽しいの? と聞かれて  照井良平

現代詩時評 ウクライナのためのレクイエム 立原直人
詩  集  評 忘れがちな生活の知恵 魚津かずこ
詩  誌  評 素材をいかに処理するか 後藤光治
グループ詩誌評 高齢がなんだ。元気だよ。充実の年だよ。 河合政信

自由のひろば (選・草野信子/都月次郎/おおむらたかじ)
滋野さち/立会川二郎/坂田敬子/大野美波/
村田多惠子/佐藤一恵/加澄ひろし

新基地建設反対名護共同センターニュース
寄贈詩誌・詩書
詩人会議通信
読者会報告 4月号 芝原靖

●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成

編集手帳

声明


●詩作品

あなたへ
中村明美

この世界にあるものは
ひとがつくったものだから

桜子さんはそう言うのだ
街はクリスマスの夜で
ひとり子の生誕を祝って だから
この世界は偽物なのかと
問うたのだ

ひとがつくったものなら
ひとはつくりかえることができる
桜子さんはそう言うのだ

娘を自死で失いました
嗚咽して
切れてしまった電話

その声を抱いて
その重さにつまずいて
街の喧騒を歩いた話をした

その死が
変えようのないものであるなら
ひとは そこから
つくりかえることができる

こんなにも 生きづらい社会を
ひとがつくってしまったのなら
ひとが もう一度つくりなおす
いまはかなしみに在るそのひとが
いつか 私らの社会のこどもの
ほんとうの親となって 生きなおす
その意味を ひとは生きられる

桜子さんは そう言って テーブルの
古い傷を ゆっくりと なぞった


●編集手帳

☆今月の特集は「いま私が書く詩」です。みなさん、それぞれ日頃の題材を深めておられます。それらは独自で、多様です。
☆「戦争反対! ロシアのウクライナ侵攻に抗議します」ほかに寄せられたのは、他国の領土を戦争によって奪おうとし、核使用も辞さない独裁者プーチン大統領への抗議、平和を望む言葉です。
いまのロシアには言論の自由がなく、政権のプロパガンダのみ流しつづけているようです。それで思い出すのはかつて侵略戦争をしたわが国も一方的な政治宣伝、ウソを国益のもとで流し、それを信じた国民には飢えと死が待っていたのです。いま現政権は、ウクライナ問題に乗じて米国の核兵器の共同運用や敵基地を先制攻撃するなど、憲法九条を変えようとする動きをしています。
詩作者として、事実(情報戦争の中身も)をみきわめ、いのちを、平和を重んじる日常を送りたいものです。
☆第56回詩人会議新人賞の詩、評論部門が決まりました。58頁参照。みなさんの今後の発展を願っています。(秋村宏)

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