むらやませつこ「わたしという存在」

むらやませつこ「わたしという存在」

わたしという存在  むらやませつこ

台所の流しの隅で
ナメクジがじとっと動いている
すろうもうしょんで動いている
貼りつくように動いている
歩いた跡がぬめりぬめりと光っている

塩 塩と叫んで つかんだ手が止まる

世界の片隅で
片目を開けて盗み見している

地球の端っこで
すろうもうしょんで息をしている

蛙がバケツの中で跳びだそうと
助けを求めて 青空を仰ぎ見る

バッタがたらいの水面で草原を
目指して
足をじたばたさせている

地球の隅の島国のそのまた小さな島で
青い海を母として息づいている
珊瑚礁
青い空を目指すことなく
緑の草原に憧れることなく
茶色い土砂に被われていく

島国の片隅にいて
小さく息を吐き
青い空を飽かずに眺めている

あーあ
あごがはずれるまで笑いたい

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