2021年3月号 特集 コロナ 冬 文化

2021年3月号 特集 コロナ 冬 文化

●もくじ

特集 コロナ 冬 文化
柴田三吉 しらせ 4  熊井三郎 金婚式 5  上手宰 二波 6  杉本一男 マスク 7
笠原仙一 待つ 8  斎藤紘二 深いのは雪だけではない 9  大西はな コロナ禍 10
いいむらすず 透けて見えたもの 11  永山絹枝 揺れる 12  清水マサ 初雪の日に 13
小田切敬子 コロナの宙を泳ぐ 14  こまつかん 警告 15  御供文範 冬の案山子 16
宮本勝夫 越冬のあとに 17  小田凉子 サイタ 18  佐藤和英 〝ブラボー〟を聞きたい 19
植田文隆 白い息さえ 20  松村惠子 予報は雪 21  鈴木太郎 惜別の青春 22
板倉弘実 Go To トラブル 23  宍戸ひろゆき コロナの夏に子どもらは 24
上岡ひとみ 幸せになる言葉 25  秋山陽子 墓の下 26  かわかみよしこ カナヘビ 27
山川茂 殺処分 28  田辺修 コロナは嘘をつかない 29  後藤光治 コロナ狂騒曲 30
野川ありき わたしたちの社会 31  志田昌教 コロナ格言集 32  黒鉄太郎 二番煎じ 33
妹背たかし マスク 34  宇宿一成 悲鳴 35  やはぎかのう 明るく 36
藍原ゆみ 感動に浸る 37  玉川侑香 柿 38  みもとけいこ 遠いウイルス 39
松田研之 空から 40  白石小瓶 水面 41  葵生川玲 一〇年の陰影 42
狭間孝 コロナ、二度めの春 43  高田真 コロナデイズ 44  山内宥厳 いのち 45

記録 コロナ禍の日々
いしだひでこ 46  いわじろう 46  岩井洋 47  遠藤智与子 47  大嶋和子 48
小川桂子 48  くらやまこういち 49  坂井勝 49  佐々木洋一 50  里崎雪 50
芝原靖 51  城田博己 52  出木みつる 52  床嶋まちこ 53  豊田智慧子 53
中正勇 54  長居煎 54  なかむらみつこ 55  村田多惠子 55  横田重明 56

 

おはなし 真の和解のために(上)――日朝両民族の歴史的関係から考える  徐京植 78

研究発表 埼玉県東部地方を中心としたネズミの飼育を追って  鈴木文子 58

書評 青木みつお いだ・むつつぎ詩集『美しいみどりの海』 70  呉屋比呂志詩集『流離』 70
南浜伊作 葵生川鈴詩集『マザー・コード』 71  杉本一男 『谷本勝詩選集』 71
佐々木洋一 山岸ヒロ詩集『六頭目の牛」 72  くらやまこういち詩集『五分歩けば池がある』 72

ひうちいし 洲史 田中茂二郎 奥田史郎 春山房子 白根厚子 宍戸ひろゆき 66

浜本はつえ小詩集  マスク生活/越前蟹の憂い/水仙花/戦争を知っている/風が吹いていった 74

四季連載 詩の見える風景・みたび春――コロナ禍の時代に  杉谷昭人 90

詩作案内 わたしの好きな詩 新川和江  宮武よし子 92          辺野古の写真 57

詩作入門 幼い頃の疑問から  瀬野とし 94  私の推す一篇 2021年2月号 73

現代詩時評 「疎」の哀しみ 立原直人 96
詩  集  評 四季のなかで深く交わる 田辺修 98
詩  誌  評 再読したくなる詩との出会い 後藤光治 100
グループ詩誌評 詩作が希望であることを 上岡ひとみ 102

自由のひろば 選・都月次郎/おおむらたかじ/草野信子 104
ひだかよし/新見かずこ/有原悠二/吉岡幸一/小川桂子/ななかまど/岡村直子

詩人会議通信 113 ●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 120 編集手帳 120


●詩作品

しらせ
柴田三吉

映画館を出て電源を入れると
暗い舗道に留守電の点滅が

再生したとたん
遠藤です、ちいこが無事出産しました
と はずんだ声が飛び込んできた

知らない遠藤さん
男の子とも 女の子とも言わず
ひとことで切れている

遠くの町か、近くの町か、いまもしらせを待つひとがいて、もどかしく時計を見上げているのではないかと、すぐに間違いを伝える電話をかけたが、受話器からは警戒の気配。

赤ちゃんの留守電をいただいた……
でやっと気づいた遠藤さんは
顔を真っ赤にしたことだろう

多くのひとが亡くなったと
いたましいニュースに囲まれた夜
閉ざされた町に響いたうぶ声
そのよろこびを籤に当たったように
わたしも分けてもらったのだ

いまみた映画の祖母がよみがえる
遠藤さんも もう赤ちゃんを
抱くことができたろうか

録音を消さず何度も聴いている
きっと女の子
名前まで考えている

 

 

 

●編集手帳

☆「コロナ 冬 文化」。新型コロナ感染者が世界全体で一億人、わが国では三八万人を超えています。私たちは生と死の間で〝うろうろ〟しているのです。ウイルスは人間より長い歴史をもちいま自然破壊によって未知のウイルスが居所を人間に移そうとしています。
いままでの思考外のことが起っているのです。それを理解しない菅内閣や政治屋は、いのちよりも自らの利権を優先して動いています。それらと、自らの中身ともむかいあって格闘しているのが、みなさんの作品です。
☆「コロナ禍の日々」では、緊急事態宣言下で、人と人とのつながりを求めて活動しているみなさんのたしかな意志が伝わってきます。
☆徐京植氏の「真の和解のために(上)」は、〝自らの国がなにをやってきたかを知る必要がある〟という言葉通り、私たちの生きかたの根底におかなければならない歴史の事実です。
☆コロナ禍のため、人手がなく、すべてが遅れ気味、ご容赦ください。(秋村宏)

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