2021年9月号

2021年9月号

●もくじ

特集 視る
武田いずみ 絵を描くことは 4  立原直人 見えるもの 見えないもの 5
坂杜宇 海行かば 6  上野崇之 八月十五日を朝鮮半島で迎えた者たち 7
刀根蛍之介 仁王の視線 8  織田英華 あなたをずっと見つめている 9
石関みち子 八月の広島 10  いわじろう シャッター音 11  古野兼 共生 12
桜陽 妄想 13  赤木比佐江 向日葵を見に行く 14  宮武よし子 トトロの森で 15
野川ありき 母のこと 16  かわかみよしこ 朗読ボランティア 17  加藤徹 心に刻む 18
Tanocitta 自然な疑問 19  榊次郎 魚が消えた日 20  菅原健三郎 海の底から 21
秋山陽子 3本のフィルム 22  あらきひかる 席 23  鈴木義夫 におい 24
中村明美 二日月 25  草野信子 夜ノ森で 30  北島理恵子 既視感 31
くらやまこういち 視たいもの 視えること 32  目次ゆきこ 母の記憶 33
伊藤眞司 八月 34  たなかすみえ 松花江 35  黒鉄太郎 弔い釣り 36
鈴木太郎 「記憶の遠近法」を視る 37  高嶋英夫 めがね 38
上山雪香 届かない言葉 39  白根厚子 蜘蛛 40  坂田トヨ子 蜥蜴の季節 41
木村孝夫 視る 42  志田昌教 被爆者のいない八月 43
宮本勝夫 いまに息づく「縄文」の心 44  水衣糸 地球の未来は 45
奥田史郎 まぼろしの街歩き 46  滝本正雄 あの時…あなたは その時…わたしは 47
遠藤智与子 にっぽんのよなか 48  長谷川節子 ポイント社会 49    写真 狭間孝 61

エッセイ 〈見えないもの〉を視る  網谷厚子 26

 

一般詩作品
秋野かよ子 時の息 80  斗沢テルオ 八月の蜃気楼 81  こまつかん 雨、やるせない 82
平等稲雄 八月の風 83  妹背たかし 八月のKくん 84  上岡ひとみ 川まつり 85
大西はな 装う 86  いいむらすず 展望 87  佐藤誠二 地方視察 88
草倉哲夫 日常の前線 89  御供文範 八月の沖縄の青い空 90  浜本はつえ おひとりさま 99
床嶋まちこ いつだってスタートライン 91  加山みどり 2000年8月6日 広島を歩く 92
西明寺多賀子 団扇 93  三浦千賀子 一番怖いこと 94  はなすみまこと 親密 95
清水マサ 岐路 96  田島廣子 老婆は飛び込んだ 97  山田よう まなざし 98

 

論考 外国だのみの食料   光谷公男 50

 

エッセイ 半世紀に及ぶ詩への思い――原圭治エッセイ集『詩の希望、詩の旅』を読む  三浦健治 62
歴史的事実を大切にしよう――徐京植さんの「おはなし」を読んで思うこと  千葉昌秋 66

 

書評 宇宿一成 中村明美詩集『目覚めたら草を』 74  ゆあさ京子詩集『あったよ』 74
白根厚子詩集『青い石』 75  水衣糸詩集『ゆめのはじまり』 75
南浜伊作 大塚史朗詩集『吹越の里で』 76

ひうちいし 照井良平 戸田志香 北川ただひと 横田重明 77

笠原仙一小詩集  真夏のオリンピック狂騒伝 70

私の推す一篇 2021年8月号 123

四季連載 詩の見える風景・みたび秋――何も見えない情況のなかで  杉谷昭人 100

詩作案内 わたしの好きな詩 久米まさ  神流里子 102

詩作入門 物語への変換  柴田三吉 104

現代詩時評 雪崩になる前に 立原直人 106
詩  集  評 はかり知れない人の生の重み 田辺修 108
詩  誌  評 心に遺るものでなければ詩ではない 後藤光治 110
グループ詩誌評 引き継がれていくもの 上岡ひとみ 112

 

自由のひろば 選・おおむらたかじ/草野信子/都月次郎 114
ななかまど/立会川二郎/滋野さち/佐藤一恵/小田凉子/村口宜史/橋本敦士/やまくま

「ことしも8・15」20周年記念 60 全国詩誌代表作品集ご推薦のお願い 76 詩人会議通信 124
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128 読者会報告 8月号 秋山陽子 表3


●特集詩作品

絵を描くことは
武田いずみ

上手に描けないまま歳をとっても
何かを見つめ続ける時間の
密度で
絵を描きたい
地面に腰を下ろして

日曜日 春の河原へゆく
川ってこんなに真っ直ぐだったのか
整った土手のブロック
背の高い草の足もとに
ペットボトル
描く 描かない どうする

月曜日
きのうの絵と朝食
チャンネルを変える 朝刊をめくる
誰が正しい正しくない 云々
数秒ごとに振り回されて
こっちの方がおかしいの 両眼をこする

ベランダのむこう 今日は雲が少ない
受けとりたい 新しい景色
春はハナミ 川はサラサラ
正義はタダシイ なんて言わない
絵を描きたい
地球に腰を下ろして

 

 

●編集手帳

☆今月の特集は「視る」です。「〈見えないもの〉を視る努力をしなければならない時代に生きている」という網谷厚子さんの言葉のように、それぞれのみなさんが視た現在の社会の実相がみえます。
☆光谷公男さんの論考は、自著の『外国だのみの私たちの食料』(農を応援する雲南の会・3月刊)からまとめていただきました。「私たちは、食料のほとんどを外国に依存している」ということを知っているようで深く理解していないのではないでしょうか。
☆東京オリンピックの開会式が7月23日夜、新型コロナウイルスの拡大するなか、無観客(国内外の要人、国際オリンピック委員会関係者だけが招かれた)で行われました。花火の華麗さと端正な舞台の淋しさ。ⅠOCの商業主義と権力者の私利私欲がむすびついた祭典の長さ。復興、嘘、ごまかし、隠蔽、差別、医療崩壊、命などの言葉が浮かんできました。アスリートの健闘に魅せられながら、五輪中止を考える感染状況なのです。
☆詩作品を多く載せました。(秋村宏)

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