自由のひろば選(2021.1)
●1月号 自由のひろば作品
フレームアウト 木崎善夫
こんなところに空がある
水たまりに映る空がある
察するに上空は……晴れ
察するに青い……碧い……空
水たまりに映る雲が
地上からフレームアウトしていく
上空には続きがあり
雲はずっとずっと流れていく
日常的にビルの窓から空を眺める事も
モニター越しに空を眺める事も
フレームの中だけの世界
フレームの外は切り捨てている
水たまりに映る雲が
地上からフレームアウトしていく
雲を追いかけて上空を見上げるとき
水たまりに映る顔がフレームアウト
立ちすくむここからフレームアウト
縛られた時間からフレームアウト
フレームの外にはいつでも
ほんとうの空がある
●1月号選評
選評=おおむらたかじ
さりげない一つの発見、水たまりを見つめて、そこに映る風景の移り変わりの確かな描写です。
立ちすくむここからフレームアウト
縛られた時間からフレームアウト
終連は見事です。
選評=草野信子
まず、一行目に魅力があります。枠のなかに見えるものだけが世界ではないこと。枠の外に意図的に隠されたものがあること。フレームアウト、枠の外に出て「ほんとう」を見よう、と、シンプルに語っていることに、清新さを感じます。しかし、一編の魅力は、ビルの窓、パソコンの画面、特に、水たまり、を「フレーム」として見た木崎さんの眼にあると思います。
選評=都月次郎
最近は水たまりもあまり見かけないが、そこに映る青い空とゆっくりと流れていく白い雲、これはいつまでも見ていられる。都会の空はいつも何かに遮られ、閉じこめられ、傷跡のように電線が走っている。枠の中の空と人間の暮らしを見つめて、とてもリズミカルに描いた。秀作です。