2024年2月号 特集 海外詩

2024年2月号 特集 海外詩


●目次

特集 海外詩
韓  国   文明を問う韓国詩人 ナ・ヒドク  佐川亜紀
中  国   詩人よ 松明をかかげよ  石子順
アイルランド   イーヴァン・ボーランドにおける歴史意識とフェミニズム  水崎野里子

インタビュー   シリアの文学・詩の状況――ムハンマド・オダイマさんに聞く
聞き手・翻訳 武田朝子 武田オダイマ沙春

 

新春作品特集
宇宿一成 森の思考
春山房子 種をまく
刀根蛍之介 蠟梅の花
豊田智慧子 雷鳴の夜が明けて
あべふみこ ステンドグラスの声
織田英華 わざわざの世界
こまつかん 萌え出た新芽
妹背たかし 雪の哀しみ
いいむらすず 叶うものなら
おおむらたかじ 末期戦中派です
原圭治 あなたに戦争は 見えませんか
西明寺多賀子 待つ
北村真 夜明け
佐伯徹夫 本との出会い
三村あきら 半割のオード
浦西登 樹
渡世志保 花の攻防
荻原梨絵 星のソネット
狭間孝 希望の年になるように
青木みつお 湯滝にて
中村純 テネシーワルツ
黒鉄太郎 老人会議
伊藤眞司 雛人形
都月次郎 火山島の言葉たち
あらきひかる 料理
清野裕子 晩年
山﨑芳美 ペロペロキャンディーをなめる二人
田島廣子 喜寿の片思い
清水マサ 秋の夕暮れ
細田貴大 制されていない区間
河合政信 熱闘甲子園白書
松田研之 テレビの前で
荻原紗希 詩二篇
後藤光治 みそぎ池
横山ゆみ 讃えよや信仰の心
杉本一男 第二斜坑で

 

書評 宇宿一成
草倉哲夫『補遺詩集 くみちゃんの水芭蕉』
野口やよい『星月夜』
佐々木洋一
青木みつお詩集『いつの間にか歯を喰いしばっていた』
あさぎとち詩集『水は器に合わせ形を変えるでしょう いつか 思いもよらぬときに』

 

見る・聞く・歩く 柴田三吉 榊次郎

私の推す一篇

ひうちいし 新閒芳子 宍戸ひろゆき 玉川侑香 青井耿子 池田久雄 なたとしこ やはぎかのう

田中茂二郎小詩集  天使たちの居るところ/事情/ヒロシマの影/ひとりでいいんです/パレスチナの小鳥/永遠と一日
詩作案内 わたしの好きな詩 長田弘  比留川美津子
詩作入門 ホッコリした気分の中で  いわじろう

現代詩時評 私は戦争を知らない 北村真
詩  集  評 こうして、今日もまた、この星のどこかで《詩》が生まれる 勝嶋啓太
詩  誌  評 普遍性と個性と 野口やよい
グループ詩誌評 紡がれる時間 青木春菜

自由のひろば (選・坂田トヨ子/中村明美/南浜伊作)
有原悠二/大木武則/榊原義通/小林信次/小早川潤子/佐藤一恵/ピッコロピノキオ/やまくま

寄贈詩誌
詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 山本明良
編集手帳 読者会報告


●詩作品

森の思考
宇宿一成

森は考える
はるかな時間を
封じ込めているから
一本の木の幹のでこぼこや
樹皮のはがれに
嵐で倒れた巨樹の上に育つ若木や
苔むした切り株に

地中に広がる
根によって
真菌や細菌を仲立ちに
樹木たちは互いの思考を伝え合うという

森を生きる
虫や鳥や獣たちも考える
森の時間をともに生きる者として

森の中を流れる水のように
留まることのない時間を
森にたくわえるために
時間が森の思考によって
匂いたつように

人は
森の時間と思考に
満たされるために
森の香りを
吸いに行くのだ


●編集手帳

☆すべての戦争は理性の崩壊によって始まります。理性の崩壊はまず為政者の言葉に表れ、それが多くの国民に浸透し、やがては残酷な殺戮にまで進みます。ロシアの大統領のみならず、イスラエルの指導者たちも「戦争に民間人の犠牲はつきものだ、ハマス一人につき民間人二人はいい結果」と言い放っています。これが人間の言葉でしょうか。一方、ハマスの側も同じ過ちを犯しました。歴史的経緯は一旦置き、理性の回復による即時停戦を実現しなければなりません。
☆海外詩特集は、佐川亜紀、石子順、水崎野里子、オダイマ・ムハンド、各氏にお願いしました。韓国、中国、アイルランド、シリア、それぞれの国の詩人たちの現実と向き合う姿勢、命の豊かさを語る言葉に打たれます。詩はつねに私たちを励ましてきました。理性と詩を失った世界があるとすれば、それは人間が人間でなくなるときでしょう。
☆新春作品は多くの会員に参加していただき嬉しい限りです。詩への清新な息吹を次号までお届けします。(柴田三吉)

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