2023年5月号 特集 子どもたちへ、希望の言葉を
特集 子どもたちへ、希望のことばを
彼末れい子 地球の子
上手宰 二列
佐藤和英 ふるえる
櫻井美鈴 走りたい
遠藤智与子 希求
北村真 うそでも ほんまでも
大久保せつ子 雪道を
鈴野未央 白い犬
加藤徹 野にこそ咲く
織田英華 引き継ぎ
立原直人 仮面の下には
武田いずみ 気泡
呉屋比呂志 十四歳の影
池田久雄 どうせやるなら喜んで
古久保和美 孫への メッセージ
柳瀬和美 お兄ちゃん
伊藤眞司 孤児
草倉哲夫 友情
田辺修 トラックの荷台
青木みつお 恐怖と福祉
小田切敬子 うれしい二足歩行
青木春菜 光の存在
藍原ゆみ 子どもたちの声を聴く
塚田英子 歩む子
佐藤誠二 隠し味
飯泉昌子 満天の星の下
いいむらすず 大切な話
瀬野とし あなたも
エッセイ
戦争は人殺し 田中和雄
これからを生きる若者たちへ――「思い込み」について 田上麦文
子どもだった 寮美千子
カイロ日本人学校とモックン基金のこと 長沢美抄子
子どもの人権と子どもを取り巻く状況 武田美代子
子どもには居場所を大人には考える場を 佐伯徹夫
自分の道を 小田凉子
子どもの未来 平由美子
弱くて優しくて純粋で 犬伏久美子
「勇気をもって生きる」には ハマダ・テツロー
実践「雨の学習」 若山健太
未来の子どもたちへ 山田よう
第57回詩人会議新人賞
総評 選評 選考経過
詩部門 入選 横山ゆみ 闇市カムバック
佳作 救愛 義父
赤井紫蘇 還暦
まだらめ三保 亜熱帯の少女
評論部門 佳作 水埜正彦 石垣りんと戦後民主主義
一般詩作品
白石小瓶 いのちの居場所
野口やよい 水仙
丸山乃里子 あの街
松村惠子 西之島
水衣糸 焼夷弾のよう…
三浦千賀子 文芸コーナー
御供文範 おいてきぼり
いわじろう 癪に障ったので
滝本正雄 小樽が身震いしている
清水マサ 母の遺品
私の推す一篇 2023年4月号
ひうちいし
神谷毅 内田貴子 中田富美子 小川道子
村田多惠子小詩集
お別れの手続き/ご挨拶/三十三回忌/行ったり来たりの思い
詩の実作教室 まるとお兄ちゃん わたなべとしえ
●講師作品批評 中村明美
詩作案内 わたしの好きな詩 原田直友 斗沢テルオ
詩作入門 言葉と音楽と 清野裕子 102
現代詩時評 詩人からの宿題 北村真
詩 集 評 「いれかわりたちかわりゆきすぎる」 北島理恵子
詩 誌 評 ひとをくわずに、楽しんで詩を書こう 黒鉄太郎
グループ詩誌評 手渡された言葉 あらきひかる
自由のひろば (選・中村明美/南浜伊作/坂田トヨ子)
加澄ひろし/ばんば/北川聖/齊藤進/坂田敬子/
cofumi/橋本敦士/大木武則
詩人会議通信
読者会報告 4月号 秋山陽子
●表紙/扉カット/表紙のことば 冨田憲二
編集手帳
●詩作品
地球の子
彼末れい子
すべすべの うす赤い肌で
きみは〈赤ん坊〉として生まれてきた
身を守ろうとして
やがて生えてくる毛は
頭と 陰部と 腋 だけだ
きみの先祖は
ほとんどの体毛を手放してしまい
かわりに
長距離を走ることができる力を得た
チーターは 六十秒しか走れないのに
きみは走り続けることができる
暑苦しい毛皮を脱ぎ捨てたので
肌の汗はすぐ蒸発し
体にたまる熱はどんどん放出されて
ねらった獲物が足をとめるところまで
きみは追い詰めることができる
そんな驚異的な持久力
そして 肌をしたたり落ちる汗の中に
頬を伝う塩辛い涙が混じっても
手の甲で ぬぐい去り
また 黙々と土を起こすことができる
そんな上腕の秘められた意志力
狩人の血 農民の血
それらを脈々と受け継いで
きみは
うす赤く輝いて生まれてきた
まぎれもない
地球の子
●編集手帳
☆作家の大江健三郎氏が逝去。人間の闇に光を見出し、魂の救済を紡いだ作品は世界中で読まれ、’94年ノーベル文学賞を受賞しました。主要な仕事に、障害を持って生まれた長男光さんとの共生を描いた作品があります。世界に絶望しかけた時期、成長していく光さんに希望を蘇らせた氏は、苦難を超えて生きる人間の美しさを描きました。民主主義を守る言論と行動も続け、憲法改悪を阻止する「九条の会」発起人の一人でした。
☆今号の特集は子どもたちの受難時代にあって、彼らにどんな世界を残し、希望の言葉を贈れるだろうかと考えるものです。また子どもの生命力が大人たちに与える喜びも見つめたいと思いました。会外からは、田中和雄、寮美千子、田上麦文、武田美代子、長沢美抄子、各氏より貴重なエッセイをいただきました。
☆第57回詩人会議新人賞が決定し、詩部門入選・佳作作品を掲載しました(評論部門は追って掲載)。力作揃いの結果です。これを機に、入賞した皆さまの更なる飛躍を願っています。(柴田三吉)