今井くるみ「この世のものではない」
この世のものではない 今井くるみ
福島からきたことをかくして生きよう
何回も死のうと思った
放射線のばいきんって呼ばれた
賠償金もってるんだろうって
毎週お金をとられた
これは暴力にたえた子どもの話
罪とがのない子どもたちに降る差別の嵐
同じことがあった広島でも長崎でも
被爆をかくして生き
影響があるからと結婚を止められ
ひっそりと亡くなっていった人たち
黒い雨のあと
無知な差別の嵐が吹きあれる
ヒバクシャは国際語になり
地球ぐるみで核兵器をなくそうと国ぐにが知恵をだしあう時代
流れにさからい被爆国の役目をうち捨てて
わたしの国はわたしの身代わりになった人びとを見ごろし
丸ごとあの世にゆこうとしているのか
暗黒の世に逆もどりをして
泣き暮らすのはどこの誰
いじめにさらされた少年はしめくくる
震災でいっぱい死んだから
つらくても生きるときめた
それはあの夏
熱線で灰と煙にかわった人
何十万人ものいのち
もの言わぬたましいが彼の口をかりて
今にあらわれたのではないか
わたしも気持ちをつよくもとう
生活苦の嵐などふんばってみせると