創刊号巻頭詩 「再現」 城侑

創刊号巻頭詩 「再現」 城侑

再現  城侑

わかりました
わかりました
あなたはぼくが泥棒するのを見ていたという
のですね
だから泥棒だというのですね
わかりましたよ
あなたが見たとおり
ぼくのまえでぼくがいかに泥棒をして
ぼくがどのようにして泥棒になったかにつき
再現して見せてください

どのあたりで
ぼくは泥棒になったのですか
この村のはずれに立ってる石地蔵のあたりで
ですか
それとも切株に腰をおろして
木を伐りはじめたそのときからだというので
すか
またはぼくがぼくの家を出たときすでに泥棒
だったというのでしょうか
または または
昨夜ぼくが寝床の端で眠っていたとき
いやその前日
家出をしたまま帰ってこない母に手紙を書い
ていたとき
そのときすでに泥棒だったというのでしたら
そのところもやってください
はじめからやってください

泥棒とはどんなものか
だれが見てもわかるように
やってください!
やってください!
ぼくだって このぼくの目で客観的に確かめておく必要が
ある
どこがどの程度に悪いものか憎いものかを

だからすぐにやってください
もし腰つきが憎いのだったらすぐにも伸ばし
てみせましょう
もし 目つきが悪いのだったら心を優しくも
ちましょう
とにかくぼくがやったとおりに再現して見せ
てください
ぼくがやったことなのですから
あなたにやれないはずはないし
ぼくがやる一部始終をつけ狙っていたのです
から

ぼくよりうまくやれるはずです
ぼくより上手にできるはずです

『詩人会議』1963年1月号

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