第37回(2003) 詩部門佳作入選 宍戸ひろゆき
宍戸 ひろゆき
1941年12月 山形県川西町生まれ。
千葉大学教育学部卒業。千葉県船橋市の小学校に勤務。
船橋市教職員組合青年部長。全国生活指導研究協議会中央常任委員。
船橋市の小学校を定年退職。
山梨県北巨摩郡大泉村谷戸4593-5でロッジを経営。
受賞のことば
うれしいです。
私は、大きな構想力がないためか、小説は なかなか書くことが出来ないでいます。また、短歌や俳句のように限られた字数で自分の表現したいことを自在に表現もできません。それで、詩なのです。
詩は、自分の表現したいことを表わす形式としては最高だと思っています。毎日でも書きたいほど気に入っています。
私が、詩を作るとき気をつけることは、わかってもらえるか、読んで気持ちの良いリズムか、言葉が情感を感じさせるか、といったごく簡単なことです。
技法で最近凝っているのが「繰り返し」と「問いかけ」です。テーマでこだわっていることは「子どもたちの今」と「平和」の関係です。私的な世界としては「自然の中の自分」です。
私の詩を「詩人会議」誌上で、読んでもらえるようにこれからもがんばります。
凍土を掘る 宍戸 ひろゆき
凍土を掘る。
力を込めて
スコップを
叩きつけて掘る。
冷たい風が吹き
凍えるような寒い日に。
アフガニスタンの難民キヤンプで
数十人の子どもたちが
飢えて
凍え死んだという
小さな新聞記事を読んだ後
私は庭に出て
生ごみ用の穴を掘る。
標高千メートルの
八ケ岳南麓高原
冬の土は凍土と化し
スコップを跳ね返す。
スコップに
力をこめ
凍土に
叩きつけて掘る。
極寒のアフガニスタンでは
飢えて
凍え死んだ子どもたちを
埋葬しようと
凍土にスコップを突き立てているだろう。
凍土に跳ね返されるスコップが悲鳴をあげ
粉砕された土塊が
直ぐ凍りついて人々の皮膚を刺し
消えることの無い苦痛を与えているだろう。
凍土を掘る。
スコップに
怒りを込め
叩きつけて掘る。
平和な八ケ岳南麓高原で
私が埋める生ごみは
春から夏にかけて
ゆっくりと豊かな土と化し
緑の野菜を育てる。
戦いの止まないアフガニスタンで
埋葬される
飢えて
凍え死んだ子どもたちは
平和が訪れないかぎり
凍土に埋もれたまま
決して決して決して
土とはならないだろう。
怒りをこめて
スコップを叩きつけて掘る。
凍土を掘る。
アフガニスタンの子どもたちの
悲報を知った
冷たい風が吹き
凍えるような寒い日に。