2025年4月号 特集 詩と短詩型文学――その関わりを巡って

2025年4月号 特集 詩と短詩型文学――その関わりを巡って


●目次

特集 詩と短詩型文学――その関わりを巡って
エッセイ 覧古考新――詩と短詩型文学  本多寿
韻律に託す祈りのこころ――詩と短歌  福田淑子
「詩のかたち」について――詩と俳句  榎並潤子
同態の美学――詩と川柳  高鶴礼子

一般詩作品
横山ゆみ 詩人と歌人
髙橋宗司 勾玉
横田重明 石を磨く
清野裕子 android
大原加津緒 自分の感受性くらい
野口やよい 合掌
永冨衛 海の扉
古野兼 美しい浜と古里と
高嶋英夫 天地の怒り
田辺修 天候不順
浦西登 樹
三村あきら ドクダミに想う
小田凉子 扉一枚
水衣糸 サイボーグになる
関口隆雄 引っ越し
秋乃夕陽 介護
春山房子 無音
大木武則 一枚のハガキ
菅原健三郎 人生百年にオドル
斗沢テルオ 齢の数え方
おおむらたかじ みずぼうそうのウイルスくん
妹背たかし 夏の思い出
いいむらすず キャベツを剥く
八田和代 お鍋
西明寺多賀子 人と信頼
山﨑芳美 てんてこまい
伊藤眞司 気合い、気合い
上野崇之 飛行機雲を見ていた
いだ・むつつぎ たとえ小さな力でも私は詩で戦う
北村真 アリ
田中茂二郎 カンムリワシのうた
タジマカズコ パレスチナの詩二篇
都月次郎 あかるい明日

見る・聞く・歩く 魚津かずこ
詩作2025合評風景

海外詩 カンボジア 移民と難民とボート・ピープル⑴――チェイス・ピアサス  水崎野里子

書評 都月次郎 玉川侑香詩集『音が するのだった』
北島理恵子 吉田義昭詩集『海と重力』
黒鉄太郎 橋本俊幸詩集『青空に星は見えない』 北沢秋恵詩集『時の通る場所』

ひうちいし 洲史 田崎以公夫 湯浅きいち 北島理恵子 真田かずこ 山田よう 南浜伊作 青木みつお 玉川侑香 山崎由紀子

呉屋比呂志小詩集  波頭を越えて
私の推す一篇
エミリ・ディキンスンの詩を読む③ 「私は家のなかで一番小さな存在だった」  魚津かずこ

詩作案内 わたしの好きな詩 石垣りん  上山雪香

詩作入門 怒りや哀しみを捨て置かない  坂田トヨ子

現代詩時評 谷川俊太郎と寺山修司 宇宿一成
詩  集  評 詩を読むことは楽しい あらきひかる
詩  誌  評 「同労者」として 白石小瓶
グループ詩誌評 魔法の言葉たち 河合政信

自由のひろば (選・横山ゆみ/渋谷卓男/中村明美)
木崎善夫/日刈稔/有原野分/佐藤一秋/橋本敦士/落合郁夫/井上進/やまくま

新基地建設反対名護共同センターニュース
寄贈詩誌詩書
詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 中島和弘
編集手帳


●長詩

あかるい明日(ヒトのようなもの)  都月次郎

CG、AI、EV
アルファベット二文字で
今や何でも出来る
俺らの少年時代は
月光仮面がスクーターに乗って
さっそうと現れただけで
胸ときめかし
スーパーマンが空を飛ぶに至っては
アメリカすげえ~
風呂敷をマントのように首に巻いて
少し高いところから飛び降りたりした
運の悪い子はそれで何人か死んだ

あれから七〇年
人や車が空を飛んでも誰も驚かない
それに去年死んだはずの男も
ひょいとテレビに現れて
福ちゃんだねなどと言っている
僕らが見せられているのは
本物か偽物か
まったく見分けがつかない

おはようございます
一人暮らしの老人の朝に
若い美人がにこやかに登場
高齢者介護庁からやって来ました
自立型AIのアサコです
ゴキゲンいかが?
体温、血圧、脈拍などを
暖かい手で計ってくれる
美人に手を握られると血圧上がっちゃうよ
等とにやけながら機嫌よく目覚める
アサコの登場で
高齢者の医療費が12%下がったそうだ

昼には自走式ヒルコが弁当の配達
夜にはヨルコ
ではなく警護犬ミハルが町内を廻って
闇バイトの強盗に目を光らせている
そうしていよいよいけなくなると
真打ミトリの出番
宗旨によって異なるが
袈裟衣の坊さんや牧師の姿で
厳かに見送ってくれる
まあ至れり尽くせりだが
人件費はゼロ
自力発電するので電気代もタダ
政府にとっては願ったりかなったり
余った予算は軍事費へ回し
基地は無人戦闘機とミサイルで満杯

ところでこの頃あまり人間を見なくなった
車や電車は自動運転
スーパーのレジも自動レジ
商品補充しているのも足がタイヤのホジュウクン
郵便配達や宅急便も丸くてかわいいオトドケマン
え~ どこかにニンゲンいたっけ?
あっそうそうとなりの婆さん
こんにちは~
ハイハイ ナニカゴヨウデスカ
あれっ いつの間にロボットになったんだ
センシュウコロットイキマシテ
ワタシ フルサトAIオフクロサン

う~んますます心細くなってきた
ところで俺は大丈夫なんだろうか?
なんだか頭が軽くなってきたようだし
体が丸くなってきたように感じるんだが
気のせいかな?


●編集手帳

☆〈言葉から言葉つむがずテーブルにアボガドの種芽吹くのを待つ〉
☆新聞のインタビューで紹介された俵万智さんの歌です。俵さんはそこで「アボガドの種の芽吹きを待つように言葉をゆっくりつむいでいきたい」と語り、さらに「歌をつくる過程で自分と向き合い、世界を見つめている気がします」と。
☆今号は詩と短詩型文学との関わりを考える特集です。詩、短歌、俳句、川柳と、形式は違っても、ポエジーと向き合う姿勢は共通しているでしょう。本多寿、福田淑子、榎並潤子、高鶴礼子、各氏にはジャンルをまたいでエッセイを執筆していただき、それぞれの魅力、表現の核心を記していただきました。私たちの詩作においても学ぶところ大です。
☆トランプ大統領の暴言、暴挙が拡大して、世界はいま歴史の曲がり角に立っています。各国の為政者たちにこそ、真摯な言葉をつむぐ柔らかい心が必要でしょう。偏狭な自国主義、経済神話を排し、多様性と平和を願う想像力からしかそれは生まれません。(柴田三吉)

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