2024年12月号 全国詩誌代表作品集
二〇二四年全国詩誌代表作品集
北海道・東北
阿字 佐野のりこ 緑の小馬 6
宇 吉﨑光一 通りすぎる人 6
ever clear あさぎとち 桜 7
北の詩手紙 古谷祥多 ゼロこそ無限 7
新詩脈 はるひ 夏空 8
火窪 鈴木ノリ子 年老いて 8
北極星 田畑悦子 名前 9
ほろがけ通信 神谷直樹 暑熱馴化 10
関東
えごの実 田村くみこ 沈黙の音楽 11
炎樹 西山正一郎 死んだこども 11
雲の戸 山本萠 一生のこと 12
京浜詩派 武藤豊 ツバさん さようなら 13
国鉄詩人 地引浩 ALPS印健康ウォーター 13
冊 渋谷卓男 空 14
「しずく」の会 小林明代 草むらで 15
詩の会紫金草 佐藤文憲 生と死の分水嶺 16
同時代 加藤三朗 にじ 17
タルタ 先田督裕 熟し柿 17
ちぎれ雲 築山多門 一滴の詩の雫 17
ヒーメロス 高橋紀子 ボヘミアンの唄 18
花筺 井出馬子 亀さんよ 19
伏流水 うめだけんさく 眠れぬ夜 19
澪 大嶋和子 車から覗いた美しい風景 20
東京
櫟 菊地てるみ むかし 21
さざんか 清水健一 アメリカ 22
詩人会議グループこもあきそ詩文集友の会
清水マサ もう一度会いたい 22
詩人会議グループ青春同窓会
山崎由紀子 私の青春 23
shinado 榎並潤子 秋から夏へ 23
指名手配 小篠真琴 国縫漁港 24
1/2 青木春菜 水の鼓動 25
三宅島ミニ通信・百人庵便り 都月次郎 行方不明 2 25
む 水野照子 チョッキ 26
中部
グループ耕 松村茂 朝に、昼に、夜に 42
ここから 吉田義昭 針葉樹 43
鹿 橋本由紀子 夏おにぎり 43
詩食 岩井昭 うたた寝 44
湿原 長笠原真 風になる 45
詩笛 尾崎巳代子 私のありがとう 45
ジャンクション 草野信子 図書館で 46
水脈 佐野周一 民草の大罪 47
木偶 猪谷美知子 秋祭り 47
独標 原田麗子 野・深い息吹 48
新潟詩人会議通信 首藤隆司 ネジバナのネジ 49
狼煙 吉田超 引き継ぐ 49
はりみち 村上澄枝 平和な朝 50
沃野 小木克己 素描 50
近畿
青い風 井本正彦 れいめい 52
苺余果 藤の樹々 連作『夏隣』(十五言絶句) 53
イリヤ 高丸もと子 霙 53
雲 朽葉充 明太子 54
軸 菊名ドラムカン 詩の朗読会 55
詩のもり 小田凉子 前を向け 55
憧憬 三浦千賀子 子ども達に見守られて 55
朱雀 西田純 自然の中で 56
鶺鴒 工藤恵美子 合歓の花 57
多島海 江口節 聞こえる 57
手仕事 山川茂 ひとこと 58
トンビ 真田かずこ 湖畔(八) 59
プラタナス 佐藤壽夫 春のたより 59
鉾 鈴木実 国民学校初等科 60
PO 吉田享子 イチジクの木 60
ぽとり 武西良和 なだれ込む緑 61
窓 渡邊真理 木曜日は準備の準備をする日 61
まほろば たかはらおさむ 〈味方〉が〈敵〉だった 62
三重詩人 加藤英雄 冬のきんかん 63
RIVIE’RE 市原礼子 猫のいない風景 63
中国・四国
あかきの 木村一彦 ガザへ 65
兆 やまもとさいみ りんご 65
ポエム・リーフ 坂本遊 桃源郷 66
道標 中塚幾美 白いスズメ 66
ほのお 横田重明 ダリダ 67
九州・沖縄
アビラ 後藤光治 罅 68
御貴洛 河野俊一 駅前 69
詩創 宇宿一成 飛ぶ花 69
筑紫野 尚泰二郎 不幸という名の同居人 70
ながさき詩人会議 朝長芳則 峠 70
縄 芝憲子 生きていたんだね 71
複眼 山口賢 背骨 72
詩人会議グループの近況報告 73
おはなし 日本の平和主義を考える(下) ――平和のつどいパート45にて 岡本厚 28
報告 平和のつどい 報告 編集部 39 アルバム 40
一般詩作品
北島理恵子 日曜日 90 三田麻里 夜道 91 細田貴大 冬の二重奏 92
秋野かよ子 僅かなもの 93 伊藤眞司 聖断 94 池田久雄 老詩人の道しるべ 95
春山房子 詩のようなもの 96 八田和代 新しい わたし 97
池島洋 夢のような話 98 床嶋まちこ 先取りするなら 99
書評 佐々木洋一 水衣糸詩集『雲の上はいつも青空』 27
南浜伊作 畑中暁来雄詩集『世界は幸福に飢えている―新冠肺炎禍中願停戦―』 51
高細玄一小詩集 こどもを殺すな/破滅の箱舟/嘘/死は美しくない/いま 終わりを目撃しているすべての人へ 100
ひうちいし 河野俊一 武藤きよ子 永冨衛 川澄萌野 松村惠子 岸田郁 104
見る・聞く・歩く 武田いずみ 120
新会員紹介 大原加津緒 121
私の推す一篇 89
詩作案内 わたしの好きな詩 星野富弘 佐藤和英 108
詩作入門 父からのプレゼント 玉造修 110
現代詩時評 言葉の魅力にふれた日のこと 北村真 112
詩 集 評 その〈やさしさ〉に救われる〈心〉も、きっとある 勝嶋啓太 114
詩 誌 評 男はつらいよ 野口やよい 116
グループ詩誌評 順調な発行が続く二誌 河合政信 118
二〇二四年自由のひろば最優秀作品・優秀作品 82
最優秀作品 坂田敬子 蟻 82
優秀作品 橋本敦士 ひかりのさす庭 84 わたなべとしえ 白衣を脱いだ日 85
大木武則 瑞牆の山よ 86
選評 坂田トヨ子・中村明美・南浜伊作 87
詩人会議通信 122 読者会報告 10月号 芝原靖 127 ●表紙/扉カット/表紙のことば 山本明良 128
編集手帳 128 表紙2 日本被団協ノーベル平和賞受賞おめでとうございます。高校生平和ゼミナール
●詩作品
日曜日 北島理恵子
雨の日は日曜日
布団干しや夕食の買い物
ベランダの掃除もあきらめて
寝転がって 背筋をおおきく伸ばす
父が亡くなった
あの明け方も雨だった
前日までの秋晴れがうそみたいに
自転車で駆け付けてくれた
訪問の先生の合羽はびしょぬれで
心臓が止まったあとも
耳はしばらく聞こえているという
いざとなったら
大きな声で父をこちらに呼び戻そうと
あんなに心に決めていたのに
脈が取れません と言われて
喉仏が上下しなくなって
ペンライトを消した先生が
深々と頭を下げたとき
父とわたしは
不思議なくらいせいせいと
あきらめていったのだった
雨だから仕方ないね と微笑んで
ふたりして顔を見合わせるように
ここひと月
点けっぱなしだった酸素吸入器も
管をだらん
思いっきり伸びをしている
嗚咽がつよい雨音にかき消されて
世界中が
日曜日の朝のようだった
夜道 三田麻里
意地悪かける意地悪は 薄情で
薄情かける薄情は ろくでなし
真面目かける真面目は ただのでくの坊
ああはなりたくないが
こうもなりたくないと
そんな掛け算をしながら夜道を歩いておりました
車の行き来が途絶えた頃
そこは 花やインゲンやナスが植えられた畑
緑の生い茂ったあちこちから
グワッ、グワッと蛙の大合唱
それはそれは賑やかな大合唱
近づいてドンと右足を地面に叩きつけ
続いて左足でまたドンと叩きつけると
グワッ、グワッの音がピタリと止んだ
ニタリだ
思わずニタリだ
周りには人もなく
月明かりのみが照らしてる
なんて小気味のいい晩なのでしょうか
見ると、目の前に
高さ一メートルはありそうな、大きなほうき草がおりました
草と呼ぶにはご立派な
清い黄緑色のほうき草でありました
わたしには観音様に見えました
ので、会釈をして離れました
●編集手帳
☆「全国詩誌代表作品」に78誌の参加をいただきました。同人誌やグループ誌にとって厳しい時代ですが、詩への情熱は変わらず、北から南から多彩な作品が寄せられました。詩は人の心を養う糧、言葉によって人と人を繋ぐ表現です。
☆今年のノーベル平和賞を「日本被団協」が受賞。戦後一貫して核兵器の廃絶、戦争のない世界を目指す活動をしてきた人びとへの、大きな励ましとなりました。一瞬にして命を失った人、今日まで被曝の苦しみを負ってきた人の思い、その訴えをあらゆる人びとが共有し、核廃絶への力としていきたいです。とはいえロシアによる戦争は核使用の危機を高め、抑止論の欺瞞も露呈させました。政府は「核禁止条約」を批准せず米国の核に頼っています。受賞について石破総理は「極めて意義深いことだ」と言いましたが、氏はかねてより核保有論者です。その矛盾を厳しく問わなければなりません。
☆10月27日の衆院選で連立与党が過半数割れ。構造的な腐敗に国民がNOを突き付けた結果です。(柴田三吉)