2025年6月号 特集 沖縄を書く・沖縄を読む

2025年6月号 特集 沖縄を書く・沖縄を読む


特集 沖縄を書く・沖縄を読む

沖縄を読む・本誌掲載詩アンソロジー2014~24年

小森香子 辺野古の海に基地は いらない
上手宰 ウージの下で千代にさよなら
中村秀夫 沖縄戦と文夫伯父さん
榊次郎 出立
田上悦子 上空から
呉屋比呂志 歩かせる
坂田トヨ子 沖縄の海
小田切敬子 じゅごんのにちようび
河津聖恵 月桃―伊都子忌によせて
島袋あさこ ウチナーンチュ ウシェーテェーナイビランドー
安仁屋眞昭 自然と不自然
中正勇 光と闇のサイクルの中で
佐藤誠二 太陽は日々昇るけど
伊藤眞司 誰なのだ
芝憲子 ランディング
いいむらすず 釦
鈴木文子 沖縄 慰霊の日に
滝本正雄 宮古上布を着る―翁長知事の逝去を悼んで
佐川亜紀 南風
くにさだきみ 『米毒』の国の ヒラメ
中正勇 海鼠
中原道夫 密約
呉屋比呂志 父母の地沖縄よ
うえじょう晶 沖縄
小田凉子 沖縄県営鉄道
中正勇 設計概要変更申請
草野信子 ガイドブック
柴田三吉 はぜる種
芝憲子 国吉さんの家
安仁屋眞昭 土地
春街七草 川崎の沖縄桜
鈴木太郎 残波岬にて
宮城隆尋 うつし世
佐相憲一 太陽雨
杉本一男 島 そして壕へ
水衣糸 沖縄が教えてくれた
北島理恵子 クーブ
島袋あさこ 手榴弾
与那覇けい子 島
網谷厚子 沖縄哀歌
市原千佳子 ムラサキカタバミ
うえじょう晶 NO HATE
八重洋一郎 発火点
熊井三郎 鬼銭
永田豊 島へ
網谷厚子 ワイドー日本
芝憲子 沖縄こそが健康

エッセイ
住民の立場で記憶を掘り起こす  藤原健
ふわふわとした記憶  新城和博

 

田辺修 地下壕
斗沢テルオ 僕の中の沖縄
三村あきら 美らの島へ
田島廣子 マラリア
呉屋比呂志 母斑
佐藤誠二 沖縄、我が兄弟
小林信次 青い空のむこうに
春街七草 南北の塔
髙橋宗司 反安保・沖縄
秋乃夕陽 ガマのなか
大西はな 沖縄
上野崇之 軍隊は住民を守らない
伊藤眞司 目覚めない顔

第53回壺井繁治賞  木村孝夫詩集『持ち物』
受賞詩集抄 受賞のことば 選評 選考経過
福島を書くということ――木村孝夫さんへの敬意  島秀生

書評 宇宿一成 永山絹枝詩集『世界のどこかで 下』

見る・聞く・歩く 清野裕子

ひうちいし 熊井三郎 和田平司 斗沢テルオ 森智広 永冨衛 瀬野とし 南地心爽 高開一叶

吉田義昭小詩集  最終章  私の推す一篇

エミリ・ディキンスンの詩を読む⑤ 信仰と詩――ディキンスンと八木重吉との親和性  魚津かずこ

詩作案内 わたしの好きな詩 秋村宏  河合政信

詩作入門 現場からの目線で  清水健一

現代詩時評 かなしみを書く詩 宇宿一成
詩  集  評 詩集からのメッセージ あらきひかる
詩  誌  評 そこに居るということ。 白石小瓶
グループ詩誌評 思い出のきらめき 青木春菜

自由のひろば (選・中村明美/横山ゆみ/渋谷卓男)
有原野分/福富ぶぶ/清水ひさし/谷口律子/橋本敦士
/塚永行/永井秀次郎/山根信良/池島洋/日刈稔

新基地建設反対名護共同センターニュース
詩人会議グループ一覧
寄贈詩誌詩書
詩人会議通信
●表紙/扉カット/表紙のことば 中島和弘
編集手帳


●詩作品

地下壕 田辺修

その地下壕は
レイテ島に米軍が上陸した翌月
十一月十一日に掘り始めた
竹槍訓練で鍛えあげた臣民を
さらに膨大な生贄とする
呆れ果てた本土決戦に備え
信州松代の山中に大本営を造営するため

三十余年前我が家を建替えた
松代の大工 腰の曲がったTさんは
御座所の建設に駆り出され
その天井を張った時の話をした
誰かは知らされなかったが
高貴なお方が入るので
寸分の狂いも無いようにと厳しかった
明るい御座所は暗い壕に繋がっていた

暗く長い 長い地下壕は
松代から南西へ延々と千五百粁
首里城地下の壕へと繋がっていて
御座所へ入る現人神
それを護持する人々を守るため
時を稼ぐ捨て石として
三十二軍が翌月から掘り始めた

あれから七十数年を経て
今またさらに南西へ四百五十粁
宮古石垣与那国に壕を掘る
誰のためにか国土を強靭化するという
島人を顧みず 歴史を省みず
穴を掘る愚かさを繰り返す
同じ貉があらわれたかのように


●編集手帳

☆創刊以来、本誌では沖縄特集を行ってきましたが、今回は2014年~24年まで本誌に掲載した作品によるアンソロジーを組みました。’14年は辺野古新基地建設に反対する市民の座り込みがキャンプ・シュワブ前で始まった年です。
☆戦争末期に沖縄で行われた地上戦、戦後から現在まで続く米軍基地の問題は日本の平和を考える縮図となっています。南西諸島全体の軍事化、戦争への準備が一層進むなか、私たちの声でその過ちを止めなければと強く思います。
☆エッセイは昨年に続き、沖縄の問題に深く関わってきた、藤原健氏と新城和博氏にお願いしました。ともに住民の立場から戦争の実態と傷を掘り起こす内容で、記録の大切さを示しています。
☆第53回壺井繁治賞は、木村孝夫詩集『持ち物』に決定しました。いわき市在住の木村さんは2011年の東日本大震災以後、一貫して被災の傷と、収束の見えない原発事故の災厄を書いてきた詩人です。多くの方にこの詩集を手にしていただければと思います。(柴田三吉)

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