2024年9月号 特集 第34回総会報告

2024年9月号 特集 第34回総会報告


第三四回総会特集

第52回壺井繁治賞受賞をして
代書屋と詩人  田中茂二郎

参加者の感想

詩運動の継続を目指して 総会ノート アルバム


加澄ひろし 迷い子
白石小瓶 冬越しの甘夏(2024Jan)
佐藤和英 天使の分け前
野口やよい 黄落
呉屋比呂志 夢の暗示
斗沢テルオ ガザの子
みもとけいこ この苦しみを知れば
たからきれい 鬼の目のナミダ
伊藤眞司 後悔・ある女
塚永行 川底から聞こえる
古野兼 レッドパージ
大木武則 相模原事件のあなたに
おおむらたかじ 桑の畑の真ん中で
大西はな 「星鹿」という漁村に棲む君へ
三浦千賀子 教室
西明寺多賀子 楓の実
永山絹枝 あなたは いま…
秋乃夕陽 暇を持て余す
髙橋宗司 茶摘み
八田和代 道草
畑中暁来雄 戦争準備
床嶋まちこ ねがい
妹背たかし 怯え
田辺修 廃駅

追悼 白石かずこさん 魂の解放者  中上哲夫

ひうちいし 西山正一郎 古野兼 河野俊一 杉谷昭人 小泉克弥 青井耿子

書評 佐々木洋一 遠藤智与子詩集『道のり』

見る・聞く・歩く 北島理恵子

私の推す一篇

石木充子小詩集  ビワの木蔭で/青い「召集令状」/樫の木の下で/鬼の系譜

詩作案内 わたしの好きな詩 真壁仁  平等稲雄

詩作入門 寝かせること  佐伯徹夫

現代詩時評 沖縄慰霊の日の「平和の詩」に寄せて 後藤光治
詩  集  評 「凍えるほど暑い夜は」 北島理恵子
詩  誌  評 当たり前の日常 黒鉄太郎
グループ詩誌評 仲間と共に、書き続ける 青木春菜

自由のひろば (選・中村明美/南浜伊作/坂田トヨ子)
橋本敦士/有原野分/藍眞澄/坂田敬子/わたなべとしえ
/雨野小夜美/加美瀬耀司/石川小傘

全国詩誌作品集お誘い
寄贈詩誌詩書
詩人会議通信
表紙のことば 山本明良
編集手帳


●詩作品

迷い子  加澄ひろし

イソヒヨドリが鳴いている
海を指差すアンテナの
乾いた枝の先端で
澄んだ音色で歌っている
あおい尾羽に力をこめ
か細い喉を震わせて

街にさえずる海の子よ
ビルの谷間を吹き抜ける
甘美な風にみちびかれ
ガラスのほとりに迷いこみ
汗に汚れた眺めの果てに
何をみつめているのだろうか

ひとは 空の底にいて
水面を行く雲を見あげて
果てのない自由にあこがれる
風をさえぎる壁のむこうに
見えない地平を追いかけている

星をはなれた迷い子よ
行くえも知らず さまよいつづける
みつからない 答えをさがして

イソヒヨドリが鳴いている
よどみのない 澄んだひとみで
明日を煩うこともなく
風のしぐさを見つめている

鳥は歌詞もなく口ずさむ
覚えのまま 囀る声に
ひとは言葉をかさねてしまう
口ばしる想いに 熱(ほとぼ)り
おびただしく もて遊ばれて
風のない路地をうろつくばかりだ


●編集手帳

☆少女はどれほど怖かったろう。深い傷を負ったことだろう。沖縄で昨年12月に起きた米兵による性暴力事件のニュースを見て胸が強く痛みました。
☆政府が県議会選挙後まで事件を隠蔽したのは自陣営に不利になると計算したからでしょう。県への報告を遅らせた理由を外相は「被害者のプライバシーに配慮して」と、理由にならない言い訳をしました。プライバシーに配慮しつつ報告はできたはずで、つまりは人権より選挙、米軍への忖度があったからです。沖縄戦のときと同様、国は住民を守らない、今後もそれは変わらないという象徴的な出来事で、それはすべての国民を犠牲にしてもいいという考えです。
☆第三四回総会の報告を掲載しました。参加された会員の方々の感想にもあるように、詩人会議の存続に向けて希望に満ちた論議が交わされました。困難な時代が続くいまだからこそ、私たちは持てる力を合わせていきたいです。ここを新たな出発点として、詩の豊かな未来を築いていきましょう。(柴田三吉)

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