2024年10月号 特集 詩との出会い、詩と出会って

2024年10月号 特集 詩との出会い、詩と出会って


特集 詩との出会い、詩と出会って

床嶋まちこ 生きる希望を
わたなべとしえ 詩との語らい
秋乃夕陽 表現
八田和代 飛び込んだ
永冨衛 のっぺりがちょうどいい
春街七草 ボブ・ディランに憧れて
あさぎとち 燕のヒナ
妹背たかし お見合い
あんのくるみ アブラゼミ
森山高史 ね・む・り
貴田雄介 ピン・ポン
北川聖 ひよこの墓標
安原信昭 「難破船バー」の唄
夢佳苗 冷たくて甘い

エッセイ
詩がくれたもの  渋谷卓男
詩は人生の出会いを連れてくる  斗沢テルオ
3つのハードルを越えて  武田いずみ
詩人とは何か  山野次朗
詩との出会いは詩人との出会いでも  照井良平
東日本大震災をきっかけに  魚津かずこ

座談会 60周年アンソロジー『ことばの力によって』を読む
多様な世界を描いた詩の実り
彼末れい子 北村真 瀬野とし 司会・熊井三郎 協力・たなかすみえ

 

一般詩作品
南浜伊作 輝いたレモン
呉屋比呂志 ドラム缶の風呂
伊藤眞司 スマイル クライ
山野次朗 いつか死ぬ
佐藤誠二 洞窟
木村孝夫 海の準備
救愛 無言館の裸身
水崎野里子 わたしは飢えを知らないかわいそうな女の子です
いいむらすず 朝のシャッター
田島廣子 畑で野菜づくり
乾葉子 リラ冷え
小田切敬子 光のとも
田辺修 二〇二四年 唇を噛んで
清水マサ 孫 誕生
加藤徹 にんげん
山田よう 羽村の空
三村あきら 屋上の盆栽
斗沢テルオ 老人ラプソディ

ひうちいし 青井耿子・崇浩 高鶴礼子 福山健一 大原加津緒

私の推す一篇

書評 宇宿一成 玄原冬子『福音』
高細玄一詩集『もぎ取られた言葉』

坂杜宇小詩集  放浪(涙/錯覚/モラトリアム/光陰如矢)

詩の実作教室 いのちの時間  すぎたふくみ
(詩作品批評 講師 玄原冬子)

詩作案内 わたしの好きな詩 中原厚  尾田貢

詩作入門 つぶやきに耳を澄ませて  神流里子

現代詩時評 応答を持続する言葉の意志 北村真

詩  集  評 浅薄なイメージを見事に吹き飛ばす、生命力あふれる《人間讃歌》 勝嶋啓太

詩  誌  評 第三の目 野口やよい
グループ詩誌評 ふと こころ動く時 青木春菜

自由のひろば (選・南浜伊作/坂田トヨ子/中村明美)
有原野分/橋本敦士/坂田敬子/加藤三朗/チサトモリベ/
藍眞澄/落合郁夫/おおばUFO/和田平司

詩人会議通信
表紙/扉カット/表紙のことば 山本明良
編集手帳


詩作品

輝いたレモン  南浜伊作

大学の女子寮に招かれ
小さな駅に降りたつと
レモンを空にほうりつつ待っていた

夕陽を受けて
宙で輝いたあのレモンは忘れない
あの日 何を語ったのだったか

夕闇せまる多摩川の
長い橋梁を長い列車が
窓明かりをつらねて渡って行く

九州南端の田舎から上京して二年
はじめて 女友達ができたと
入院中の父へ報告しようと思った筈だ

沿線の古本屋あさりを日課の僕は
地域の引揚者住宅にできた母と子の
セツル活動に没入しようとしていた

陶行知の教育活動のゾッキ本の束を
思いがけず発見して買いこみ
サークル仲間に進呈したりして

過ぎ去った時は もう返らないが
芝原に舞いおり 走る椋鳥のように
突然 やってきては去って行く


●編集手帳

☆《詩との出会いはいつのことだったろう。詩と出会ったことで暮らしや生き方にどんな変化が生じたのだろう》
☆詩を読み、書いている人にとって、それは日々思い返されることではないでしょうか。詩との出会い方は様々ですが、直接詩に触れていない人でも、ポエジーとの接触は絶え間なくあります。あらゆる表現の根底には詩が潜んでいて、私たちの心を潤しているので、詩のない暮らしを想像することはできません。詩のない世界は、光のスペクトルの一部が欠けているようなもの。半分の太陽で人は生きていけないのですから。
☆「九条の会 詩人の輪」による第24回「輝け九条! 詩人のつどい 静岡」が七月十四日に開催されました。講演された佐川亜紀氏の「詩は世界の共通語」を掲載(抄録)しました。世界各地で絶え間なく続く戦争や紛争のなか、厳しい現実と向き合い、詩を書き続けている詩人たちがいます。その苦難の声をまっすぐ受け止め、私たちの表現も鍛えていきたいと思います。(柴田三吉)

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