2021年12月号 2021年全国詩誌代表作品集
●目次
二〇二一年全国詩誌代表作品集
北海道・東北
阿字 佐野のり子 霧の輪
北の詩手紙 髙木莉子 猫
斜坑 道尻誠助 喜
新詩脈 木村一也 春九年
熱気球 すげのゆういち 愛しいひと
「の」同人会 菅野昌和 78年前の子守り歌
北極星 あさぎとち 白い世界
六番目の母音 神谷直樹 辻
関東
■漪 香野広一 水の掟
各駅停車 さみだれけい 幡ヶ谷にて
雲の戸 山本萠 初夏の窓
Quake 奥野祐子 ぬけがら
京浜詩派 いむらようこ 医療従事者に花の輪を
合同詩集『心をみつめて』 永田浩子 スナップエンドウの花が咲いた
冊 渋谷卓男 わたしの部屋
「しずく」の会 林新次 りんご
ta―ko執筆クラブ 西明寺多賀子 五輪とその後
タルタ 井上和之 ひげを剃る日
同時代 加藤三朗 余韻
凪 星清彦 命のそろばん
花筺 井出馬子 思い出
伏流水 うめだけんさく トタン屋根の向こう
彩 滝沢ひろし 短詩三篇
東京
いのちの籠 うえじょう晶 骨笛
櫟 高田真 かみさまのはしご
このゆびとまれ 坂田トヨ子 つくしの卵とじ
さざんか詩の会 永松美智子 蚊帳
指名手配 吉峯芙美子 正体
1/2 武順子 えんぴつ書きのラブレター
真白い花 村尾イミ子 菜の花の宵
中部
ここから 荒船健次 兄のオルゴール
詩食 岩井昭 かくしますく
ジャンクション 柴田三吉 カモメ
出発 板倉弘実 朝露
水脈 松田祐子 生ききる
独標 新保美恵子 一編の詩だって書けやしない
新潟詩人会議通信 柳瀬和美 雨の朝
狼煙 青木まや 林檎畑
ぱぴるす 太田葉子 火であること
沃野 大野とも 生きるということ
詩林 青島広行 夏の日のシャンソンコンサート
はりみち 工藤美春 三月
近畿
葦笛 青葉みなと あなたへ
石の森 春香 かき氷
苺余果 藤の樹々 十五文字の吐息
架空二重奏 山中従子 赤いキリン
呼吸 根来眞知子 月と犬
軸 幻彩 愛しの虎猫
朱雀 西田純 矢田丘陵
鶺鴒 増原順子 「し」 もてあそぶ
多島海 彼末れい子 小鉢には
手仕事 山川茂 孤独な土地
トンビ 真田かずこ まだ
はだしの街 武村雄一 あなた
100円詩集 アメミヤミク デッドヒート
鉾 高詩月 カギのない部屋
PO 根本昌幸 節分
ぽとり 武西良和 蝉の声
まほろば たかはらおさむ 遊び今昔物語
三重詩人 杉原翔 生命の条件
青い風 曽根英子 一つ鐘
プラタナス 小田凉子 ちかごろの私
中国・四国
あかきの 木村一彦 五月
詩民 石木充子 マスク人間(Ⅲ)
詩脈 榊原礼子 思いきりスキップしたいのに
ネビューラ 田尻文子 その美しさを
ほのお 小林信次 お盆にうなぎ
湖 谷真理江 夕焼けは
道標 谷葉子 見舞状
黄薔薇 松村和久 春を厭う
九州・沖縄
あすら あさとえいこ 風が舞った日に
アビラ 後藤光治 土星
いちご通信 和田一花 ネコの夜
御貴洛 河野俊一 鶏のように
詩創 阿保喜代春 現世が
筑紫野 瀬戸美都子 冬が来る
縄 島袋あさこ オキナワノアリフレタハナシ
複眼 田﨑以公夫 サカエさん あなたは強かった
ながさき詩人会議 神崎英一 これから大人になる子どもたちよ
論考 詩集にみる現実と未来 青木みつお
一般詩作品
上野崇之 地球が悲鳴をあげている
奥田史郎 非常時のころの笑い
妹背たかし 防災無線
山田よう 綾瀬川
白根厚子 押し車
南浜伊作 瞳
玉川侑香 おかあちゃん ヒコーキ!
永山絹枝 茜色の雲をたなびかせて
いだ・むつつぎ 世直し布ひもパンツの歌
いわじろう やァ こんばんは だ
大道和夫 葉書
山﨑芳美 いつになったら
吉村悟一 「自助・共助」の後
床嶋まちこ 半寿
乾葉子 線香花火
柏原充侍 はるかとおい秋の空
坂杜宇 廃家
たなかすみえ ABUNAI
菅原健三郎 遊水地
志田昌教 未曽有の豪雨
葵生川玲 アメリカわずらい
安仁屋眞昭 あたらしい憲法のはなし
原圭治 混ぜ壺になってしまうか 地球のゆくえ
池田久雄小詩集
リセットじいさん/ブブコとじいさん/どうもじいさん/葬式とじいさん
小論
凛然たる哀愁――恋坂通夫詩集『欠席届』 おぎぜんた
ひうちいし
坂井勝 板倉弘実 松尾民次郎 楊原泰子 能登眞作 青井崇浩 中里安伸
私の推す一篇 2021年11月号
四季連載 詩の見える風景・みたび冬――今年最初のクリスマス・カード 杉谷昭人
詩作案内 わたしの好きな詩 川崎洋子 上野崇之
詩作入門 たった二行の言葉をさがして 都月次郎
現代詩時評 ノーベル賞の区分 上手宰
詩 集 評 病を抱え自身と向き合う 魚津かずこ
詩 誌 評 未来への眼差し、あたたかく、たくましく 高田真
グループ詩誌評 作品の中の詩情 上岡ひとみ
二〇二一年自由のひろば最優秀作品・優秀作品
最優秀作品
立会川二郎 或る日のインド洋
優秀作品
滋野さち 忘れる
新見かずこ 時間を食べる
ななかまど わたしのカウンセラー
選評 おおむらたかじ・草野信子・都月次郎
募金の訴え
寄贈詩誌・詩書
詩人会議通信
読者会報告 11月号 芝原靖
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成
編集手帳
●一般詩作品
地球が悲鳴をあげている
上野崇之
今とはずいぶん様変わりしたけれど
私の少年時代、九州は〝台風銀座〟と言われていた
日本のはるか南方海上に生まれた熱帯低気圧は
計算されたような確率で必ずと言ってよいくらい
何日かかけて私たちの町や村を目指す
ラジオの情報を手掛かりにぬかりなく
母の指図のもと私たち家族全員がそれに備える
鎧戸のない戸や窓はすべてベニヤ板などで補強し
普段は家の外に置く雑多なあれこれを中に取り込む
いよいよ九州に上陸したそれは
進路を少しは変えたとしても強力だった
玄関の戸を襲う猛烈な暴風に飛ばされまいと
二人がかりで突っ支い棒にしがみつき
いったいどれくらい力勝負をしただろう
翌日は朝から総出の後片付けが待っていた
落ちて粉々に散乱した屋根の瓦や瓦礫など
確かに必ずそれなりの被害は発生し
樹齢何百年とも言われ皆で登って遊んだ校庭の楠が
ある年に根こそぎ倒れたのには驚いたが
学校が必ず休みになるのが嬉しかった
「台風一過」という言葉を覚えるのも早かった
晴れ渡った青空と澄んだ空気を胸一杯に吸い
近くの農家の樹から落下した甘柿を拾うのも楽しい
いつもはさほど水量のない近くの水路は濁流と化し
その中に何と金魚などが混じって泳いでいたりする
多分傍らの立派な屋敷の池の水が溢れたのだろう
通学路と田圃の境が消えて濁流が渦を巻き
自転車がその中を水しぶきをあげて通りすぎる
昔を懐かしむのはもうよそう
いまや台風被害は九州の専売特許ではない
「線状降水帯」とやらが長く居座り
全国至る所の川の氾濫、地滑り被害と死者のこと
コロナ禍での避難所暮らしの残酷
地球温暖化、乱開発、不法投棄…人間の不作為
傷ついた地球が悲鳴を挙げている
●編集手帳
☆今年は、コロナ感染のひろがりのために、常任運営委員会や各部の会合がもてず、労苦が一段と増えた年でした。それにもかかわらず、会外、会員、会友、読者のみなさんの励ましによって発行が維持できました。厚くお礼申し上げます。
☆「全国詩誌代表作品集」には、79誌のご参加をいただきました。高齢化、コロナ禍のなかでの創造への意欲が感じられ、心強い思いです。
☆今年度定期欄執筆のみなさま、ありがとうございました。来年度の執筆は、次の方へ現編集部がお願いしました。
現代詩時評=上手宰、立原直人。詩集評=魚津かずこ、くらやまこういち。詩誌評=後藤光治、高田真。グループ詩誌評=河合政信。自由のひろば=おおむらたかじ、草野信子、都月次郎。四季連載=杉谷昭人。地下室の窓=徐京植。
表紙絵は二年目の宮本能成さんです。
安倍、菅、岸田とつづく内閣の、自由で多様な個の存在を認めない思想。それと対峙する言葉の力を強めていこうではありませんか。共に。