第46回(2012) 詩部門入選 島田奈都子

第46回(2012) 詩部門入選 島田奈都子

詩部門入選 島田奈都子

東京生まれ。「詩学」「ユリイカ」新人を経て、マイペースで詩を書いてきた。マルグリット・デュラスや、外国の女流小説家の作品に触れるのがすき。乱読家。


受賞の言葉

昔、雪深い土地に暮らした。故郷を離れるという深い思いをあじわい、その妙なほろ苦さをふと反芻する。離れている程、例えばよく遊んだ神社の長い石段の脇に咲いた紫陽花や、潮風の匂いがする路地裏や丸々太った野良猫とか、くっきりと目に浮かぶのはなぜだったろうか。わからない。きりもなく現れては消え去る夜の影絵のように、ぼんやりとそれは揺れる。放射能の世になるとは夢にも思わないつい今しがたまで、憧憬であったむらは人の心の底でどれ程温かな光をもたらしていたか。追われる人は姿を消し、でもそこには様々な魂の呟きが居残っている筈だ。と思いながら情念だけで書きあげた詩に、思いがけずこのような結果を頂き、ほんとうに恐縮しております。ありがとうございました!


 

 

コメントは受け付けていません。