第43回(2009) 詩部門佳作入選 岩崎明

第43回(2009) 詩部門佳作入選 岩崎明

詩部門佳作入選 岩崎明

 

1958年岐阜市生まれ。日本大学文理学部独文学科卒。
現在会社員。岐阜県各務原市在住


受賞のことば

今までの詩作の経験から、いい詩を書こうと思わないことだと気づいている。これが、なかなか難しい。今回の場合も、夜中に床でふと浮かんで、ムクッと起き出して机に向かい走り書きしたものが原型となっている。
これまで評価された詩の多くが、このように思わず書き留めずにはいられないものでした。つまり評価されようがされまいが関係ない、これだけは書き留めておかなければ、死ぬにしねない、そんな言葉が天から下るのか地から上るのか知れないが、どこから来ようが根気強く待ちながら、それでも言葉に操り操られながら書き続けていこうと思っています。今回は過分な評価をいただきありがとうございました。


一本のピン  岩崎 明
工作機械を点検し終えたとき

一本のピンが落ちているのに気づいた

しまった、が

心当たりのないピンだ

油にまみれ

艶を失った

少し傷あり

歯車ではない

バネでもない

ネジでもない

気になるまま

もう一度、点検し直したが

異常はない

どこのどいつだ

同僚の大塚君に尋ねたが

心当たりがない

いったいこのくたびれたピンのやつ

そこには前からなかったはずだが

自分にとってそのピンが

手榴弾の安全ピンに思えてきた

いつ爆発するのか

するものか

小さなやつだが大きな一本だ

どこのどいつだピン一本ごときに

このピンが何を語るというのか

口をきけば解決さ

どうせハンパものですよと大塚君

スクリュードライバー持ってこい

丸頭ハンマーは必要ないな

リブ支点プライヤーより

すべり支点プライヤーだ

ワッシャーはバネもの

スパナは小さめ

工作固定クランプよし

いつ爆発するか

よし待ってろ

一本のピンにすべてを託しかけたとき

まてよ

この一本のピンは俺なのか

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