岡村直子「おひとりさま」
おひとりさま 岡村直子
上品なことばにみせかけて
さめた気色もちらつく
平成うまれの造語
「おひとりさま」は
まさにわたしを言い当てている
よるべなき身のおひとりさまは
日本一の大吊り橋を
スカイウォークする
春おぼろ
東に花びら貼りつけた 月
西にスルガエレガントの 太陽
空に浮かぶ富士山は 御簾の中
わたしを見下ろす月も太陽も富士山も
おひとりさまだ
46億年前からひたすら回転
生きとし生けるものを一身に抱えこみ
太陽の恵みを平等に分けあたえている
自分はなにも望まずひたすら寡黙
中学の学び舎で歌ったことを思いだす
あんよで地面をたたきましょ
地球が病気だ苦しそう
トントントン トンストトン
いつから病み続けているのだろう
この地球
それにしても
なんと巨きな
おひとりさまだろう
団地の庭で
わがもの顔でぐたっと四肢を伸ばす
ふとったノラ猫
ワシもおひとりさまじゃ と
あくびした
〈略歴〉
岡村直子 1942年生まれ。静岡県。静岡県文学連盟・日本詩人クラブ・詩人会議会員・「穂」同人。
〈表彰を受けて〉
あえぎながら
しをかくひび
とうとうたおれてしまった
きのどくにおもったのか
ようようひきあげてもらった
こんかいのしょう
まぐれあたり
タイミングのよさに
メ パチパチ
ゆめとうつつのはざま
宙から星のプレゼント
あれもこれも
みなさまあってのこと
ありがとうございます