2021年4月号 特集 三月 生きる

2021年4月号 特集 三月 生きる

●目次

特集 三月 生きる
瀬野とし 新しいノート 4  秋野かよ子 死ねない 春 5  佐伯徹夫 三月を歩く 6
呉屋比呂志 人の頭が見えない 7  小田凉子 母の家計簿 8
いしだひでこ ブルー・フェイスの丘 9  白根厚子 生きるって 10
宮武よし子 蓮華升麻 11  おぎぜんた 純粋 12  城田博己 川 13
大釜正明 転院 14  あさぎとち まいおりる 15  笠原仙一 朝はステキ 16
床嶋まちこ 道端会議 17  志田昌教 男の戯れ歌 18
いわじろう イラナイ イラナイ 19  神流里子 卒業 20
上野崇之 三月は……やはり悲しい 21  野口やよい 龍 22  南浜伊作 初夢 23
田島廣子 認知症の世界 24  浜本はつえ 生き抜いた 25  田畑悦子 ぬかるみ 26
菅原健三郎 生き・きる 27  草野信子 タクシードライバー 46
おおむらたかじ 山菜記・春のこえ 47  芝憲子 卒業式 48
芝原靖 コロナ禍の職員室 49  青木みつお 鬼の出番 50  河合恒生 鉤括弧を生きる 51
梅津弘子 小さな訪問者 52  伊藤眞司 三太の母 53  池澤眞一 怠慢 54
坂杜宇 地獄八景 55  山口賢 核兵器禁止条約の年に 56  加藤徹 ラストチャンス 57
植田文隆 こんな街でも 58  御供文範 ビンボードライブ 59
柏原充侍 おとん、ありがとう 60  松村惠子 ひと言 61  斗沢テルオ 宣告 62
斎藤彰吾 今日のうちに 63  前田新 詩、十年目の春を生きる 64
滝本正雄 子どもたちの矜持は… 65  佐藤和英 りんごを手に 66
横田重明 春、まだ浅く 67

エッセイ
あれから10年  照井良平 28
被災地と向き合う  永冨衛 32
歴史をふりかえりながら  中正勇 38
文科省教育施策批判  後藤光治 42

おはなし 真の和解のために(下)――日朝両民族の歴史的関係から考える  徐京植 70

見る・聞く・歩く 玉川侑香 68

私の推す一篇 2021年3月号 69

ひうちいし 宮下誠 中田順子 清水マサ 81

岩堀純子小詩集  わたしを流れる時間/青い花/夜から夜へ/果てしない言葉 84

詩作案内 わたしの好きな詩 高田敏子  こまつかん 88

詩作入門 我が道を行け  熊井三郎 90

現代詩時評 どう答えよう 上手宰 92
詩  集  評 内なる自分と向きあうとき 魚津かずこ 94
詩  誌  評 光の花びらのように降ってくる 高田真 96
グループ詩誌評 平和な社会へのバトンに 上岡ひとみ 98

自由のひろば 選・おおむらたかじ/草野信子/都月次郎 100
ゆきのさきこ/木崎善夫/ななかまど/田村きみたか/大久保ゆり/岡村直子/有原悠二

詩人会議通信 109 ●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 116 編集手帳 116 ビキニデーin高知 表4

西サハラ・オンラインセミナー 表3  写真 岡村啓佐 31  高校生平和集会 37


●詩作品

新しいノート
瀬野とし

ピンクの表紙 赤い背表紙
さあ、詩を書こう
ノートを広げて 綴じ目を押さえる
真っ白い紙に 薄い線が引かれて
新しい品のここちよさ

そのとき 浮かんだ

日本のフォト・ジャーナリストが
遠い国へ行って
学校の取材をした
生徒が 彼の手のノートを見て
言ったという
「そのきれいなノート
この国から持って行った木で
作ったんだろ?」
生徒たちのノートは
灰色のみすぼらしい紙…
言葉を失った 彼

わたしは 目の前のノートの旅を
逆に辿る
ノート工場 製紙工場

外国の港
森の奥まで伸びた広い林道を
突き進むトラック
つぎつぎ切り倒される木
小さくなる森…

わたしは
詩を書きたいのだが

手が 止まる

 

 

●編集手帳

☆二〇一一年三月一一日に起きた東日本大震災、原発事故から一〇年。私たちの意識は、そこから目にみえない放射能と同居することを、つねに考えなければならなくなっています。そこから先ず浮かんでくるのは〝復興オリンピック〟などと欺瞞の旗を掲げた人たちです。なによりも対話が嫌いで、一方的に自分たちへの賛同を求める為政者たち。未復興の暮らしや廃炉は、二の次なのでしょう。
三月、春の息吹にみちる季節。私たちのさまざまな作品は、みえないウイルスをみようとするなかでの、国の主権者である自身への問いかけ、といえます。
なお、後藤光治さんの学校教育についてのエッセイ(42頁)は、作者の個人誌「アビラ」4号からの転載です。
☆三浦健治運営委員長の「詩人会議総会開催の見通し」についての訴えは、私たちが、総会の持ちかた、運動のありかたを、どう考えるか、を問いかけたものです。忌憚のない考えをだしあおうではありませんか。
(秋村宏)

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