2022年9月号 特集 詩の力 ことばの恵み

2022年9月号 特集 詩の力 ことばの恵み


特集 詩の力 ことばの恵み

白石小瓶 漁り
丸山乃里子 押し花
前田新 言葉の力
はなすみまこと よどむなかで
小田凉子 羽
坂田トヨ子 言葉 言霊
こまつかん わかれ道で沈黙するな
黒鉄太郎 私は怒っているのだ
上野崇之 国語の教師の端くれとして
田辺修 私は赤ちゃん
いわじろう 信じるものは救われる
松村惠子 生きる
上岡ひとみ 形にできなかった言葉
呉屋比呂志 ウチに来ないか
床嶋まちこ 心を調えて
青井耿子 ここでも鶴が恩返し
三ツ谷直子 地上の星
伊藤眞司 生きるとは
小林その 杏畑
いいむらすず 嘘
白根厚子 マトリョーシカの平和
大西はな 月
秋野かよ子 台所のモノローグ
妹背たかし もし 詩がなかったら

エッセイ
詩とともに生きる  松下育男
詩という営み  小泉克弥
ことばに半生を支えられて  野口やよい
反復と沈黙と  武田いずみ
巡り合って あなたの詩に  宮武よし子
私にとって詩は歌うものだった  佐藤和英
心の扉をノックして  遠藤智与子
役に立てる詩の力  田上悦子
詩は今日 どこに立つか  田畑悦子
私的に詩の恵みを受けて  菅原健三郎
今こそ、ホモ・サピエンスの詩に帰るべき  白永一平
多くの人に創造の喜びを  岡田忠昭
ロシアのウクライナ侵攻に抵抗する詩の言葉  小森陽一
素直なことばと信じて  伊奈かっぺい

エッセイ
有間皇子自傷歌に寄せて  那賀須泥

一般詩作品
河合恒生 生きる
櫻井美鈴 飛行機乗り
狭間孝 八月・松林山春日寺にて
清水美智子 ツバメからの伝言
西明寺多賀子 戦争は損する
高嶋英夫 戦争はだめだ
浦西登 母死す5行詩
斗沢テルオ コンクリートアース

諷刺詩
奥田史郎 空蚤
立会川二郎 社員番号22W4349
吉村悟一 金塊たちの涙
志田昌教 スマホ戦争2022
都月次郎 ダンカイソルジャー

ひうちいし
坂田トヨ子 神崎英一 上條陽子 岡村啓佐 加瀬谷久仁子 ねなしかづら 清水マサ 洲史

新入会作品
三村あきら ハマダテツロー

私の推す一篇 2022年8月号

御供文範小詩集  つかれた心/はぐれ柿の話/安らかであれ/草笛が聴こえる

四季連載 詩の見える風景・四度目の秋――安倍元総理の死に  杉谷昭人

詩作案内 わたしの好きな詩 岸田衿子  飯泉昌子

詩作入門 自分を支えるために  渋谷卓男

現代詩時評 怠けアリの献身 立原直人
詩  集  評 生を肯定的に捉え、生き抜く 魚津かずこ
詩  誌  評 消え去ることの無い詩を 後藤光治
グループ詩誌評 季刊が定着 または目指す 河合政信

自由のひろば (選・都月次郎/おおむらたかじ/草野信子)
滋野さち/髙橋宗司/天王谷一/村田多惠子/大野美波
/加澄ひろし/村口宜史/やまくま/有原悠二

公開書簡 ウクライナ戦争の停戦を仲介してください
寄贈詩誌・詩書
詩人会議通信
読者会報告 8月号 芝原靖
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成
編集手帳


●詩作品

漁(すなど)り  白石小瓶

はっとして自転車を降りたのは
川の浅瀬に
はげしい静けさをみつけたから

微動だにせず
獲物のわずかなきらめきを待ちわびる
あれは 青鷺

せかいの一郭を治めるように
頑健で 悠長で
くずおれない意志の屹立

岸辺から距離をおき
かれをとりまく時間を
深々と呼吸させてもらう

たえまない流れの韻律
水けをおびたはつ夏のひかり
木々の葉をくぐり抜ける風

日常にたちこめる非日常の
ことばになおせないけはいに
思わずことばで触れてみたくなる

それが詩といういきものなら
目醒めるやいなや生(お)いそだち
せかいを産みなおそうといきみだすはず

くずおれそうな地平の上でも
青鷺になりすまし
佇ちつづけていられるだろうか

眼に映るありさまの前を
刹那 過(よ)ぎる
視えない事実を漁るために


●編集手帳

☆若い頃から詩が好きだったり、気づかぬうちに詩が傍らにあったり、高齢になって詩に目覚めたりと、私たちの、詩との出会いはさまざまですが、それは詩がつねに、身のまわりで息づいていてくれたおかげでしょう。
☆それらの言葉に励まされ、自身の生き方が変わってしまうこともあります。詩との出会いとは、運命的なものであるとも言えます。今号の特集作品、エッセイを読んでいると、その人それぞれの思いが、わがことのように伝わってきて、詩が人の精神、心をどれほど豊かにしてきたかが分かります。ここから詩の力、言葉の恵みが見えてきます。
☆松下育男さんから素敵なエッセイをいただきました。小学生時代から今日に至るまで、詩を愛してきた日々が記されています。途中つらい時期がありつつも詩は生の支えだった。そしていま、詩の教室で「詩を書いていて苦しんではいけない」「心弾ませて」書こうと、若い人を励ましています。苦しみを潜り抜けたうえでの、詩への希望です。(柴田三吉)

コメントは受け付けていません。