2022年8月号 特集 現代の戦争

2022年8月号 特集 現代の戦争


特集 現代の戦争

谷川俊太郎 事情と業
佐川亜紀 空の瞳
石川逸子 森に雨が
草野信子 手のひら
河津聖恵 ウクライナの緑
上手宰 ここは学校
齋藤貢 偽りのことばに
佐々木洋一 よういちさん?
本多寿 静かな家
彼末れい子 地球教室
秋亜綺羅 現代の戦争
小田切敬子 ミータンと プーチンと ケーコタンと
網谷厚子 天空マリーナ
宇宿一成 レトリックなし
中原道夫 争い、そして戦争
斗沢テルオ 人類が戦争を知らなかったら
甲田四郎 ロシアの
熊井三郎 ケーツケェ!
杉谷昭人 姉妹の兵士
後藤光治 向日葵畑
中上哲夫 郵便局にて
水崎野里子 逆転のウーマンリブ
嶋岡晨 大花火
佐相憲一 元型のその先
八木忠栄 立ち止まってみよう
芝憲子 本当の森
荒川洋治 薬師
瀬野とし 土
雨野小夜美 この世からぼくを守る歌
照井良平 貧しい武器
岡田忠昭 呼びかけ
木村孝夫 地球儀よ
菅原健三郎 私は飯を食う
芝原靖 イマジンのこども
秋野かよ子 殺される人間の観客にされて
田畑悦子 蟻穴
伊藤眞司 戦争
こまつかん 人道回廊
いいむらすず 言葉は空を駆けて
飯泉昌子 この瞬間も
秋乃夕陽 SNS
春山房子 戦争と平和
青井耿子 噛みしめる
堤すみえ テレビの中の戦争
妹背たかし プーチンのおなら
山田よう 少年とネズミ
上野崇之 蠅ではなく、人間だ
白根厚子 日本でも起きたこと 忘れてしまったのか
北村真 男
清水美智子 さくら
清水マサ 暴風
佐藤一志 どの国でも
松田研之 夏の一日

エッセイ
空はまるごとひとつなのに――ロダーリの詩とウクライナ危機  長沢美抄子
「命こそ宝」である  岡本厚
侵略戦争の構図――日本の過去の戦争を省みて  奥田史郎
重い言葉に導かれて  柴田三吉
いまやハイブリッド戦争  河合恒生
平和は理性の側にある  青木みつお
ひとはなぜ戦争をするのか――アインシュタインとフロイトの往復書簡を読んで  榊次郎

報告
辺野古浜テントで高校生たちと  豊島晃司
「泊原発運転差止め」の判決が出て――泊原発反対運動を組織して  滝本正雄
広島市立中央図書館所蔵の峠三吉文学資料は広島の戦後史・文化史をひもとく鍵  池田正彦

ひうちいし
坂井勝 中村明美 彼末れい子 宮崎多賀子 黒鉄太郎 山﨑芳美

見る・聞く・歩く
小田切敬子

私の推す一篇 2022年7月号

中林千代子小詩集
父が私の中に/仕事のその後/うちの末っ子/詩集を編んで

地下室の窓
ウクライナ戦争と、私が希望を語れない理由  徐京植

詩作案内
わたしの好きな詩 中村純  野川ありき

詩作入門
投稿 そして実作教室へ  小田凉子

現代詩時評 四頁舞台のデビュー 上手宰
詩  集  評 愛も決意も願いも場所は取らない くらやまこういち
詩  誌  評 明日を、平和を、あきらめないで 高田真
グループ詩誌評 困難な状況のなか なんとか産み出す 河合政信

自由のひろば (選・草野信子/都月次郎/おおむらたかじ)
大木武則/橋本敦士/三村あきら/坂田敬子/サトウアツコ
/上原翔子/大野美波/佐藤一恵/おおば游歩/西谷寿

詩人会議通信
読者会報告 7月号 小田凉子
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成
編集手帳


●詩作品

空の瞳  佐川亜紀

赤ん坊の瞳
真新しい宇宙
洗われた青空
金色の橋がかかる夕焼け空
この世界はふしぎな生き物で
いっぱい
瞳はきょろきょろしながら
寄り道しながら
思いがけないおもしろさを発見する

敵をまっすぐ高速で探す現代の空の瞳
ドローンが飛び交う戦場
途中に赤ん坊がいても
狙いに無駄はなく
効率的に瞳が突き刺さる
青空を見上げたまま横たわる子ども
赤ん坊と一緒に血にまみれた母
大国の強欲が命を奪いつづける
大国の侵略に抵抗するために
性能を上げる無人兵器

わたしもいつしか遠回りや
横道めぐりをめんどくさがっている
近道の落とし穴に入っている
宇宙が傷だらけになる時代
沖縄の海が基地でつぶされる
星の奪い合い
いのちがますます見えなくなるとき
空の瞳に地球一粒の涙がたまる
目には童がいつまでも必要
海で生まれたばかりのぬれた瞳
人のおぞましい欲望をこえた
漆黒の宇宙の宝石


●編集手帳

☆ロシアのウクライナ侵攻は泥沼化し、市民への殺戮も止まりません。今号を発行する頃には戦争が終結していることを願いつつ、「現代の戦争」を特集しましたが、期待は裏切られています。
☆この背景には軍事同盟の拡大と各国の覇権争いがあり、分断の元凶となっています。大きな目でみれば「人類」という種の愚かな行いということになるでしょう。気候危機や環境危機も差し迫っているなか、世界は今こそ英知を結集して戦争を止めなければなりません。
☆長沢美抄子さん、岡本厚さんには、厳しい現状分析のみならず、希望のありかを見つめるエッセイをいただき、会外の詩人の方々からも現実と真摯に向き合う作品をいただきました。皆さまのお力添えに深く感謝しております。
☆文学を通して人と人が手を繋ぎ、大きな網を編んでいくこと、その網の目を一層密にしていくことで、世界の落下を食い止めるセーフティーネットを作っていくこと。私たち詩人会議はそうした広がりを目指しています。(柴田三吉)

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