第44回(2010) 詩部門入選 佐藤誠二

第44回(2010) 詩部門入選 佐藤誠二

詩部門入選 佐藤誠二

1944年生。国公退職。奄美市在住。詩作歴無し。今回の詩作がほぼ処女作。


受賞のことば

下手の横好きで長文章を楽しんでいたのですが、今回はその事が思わぬ功を奏して詩作に役立ったのかもしれません。
多趣味で、写真では(国画会、三軌会)その他、油絵では(東光会)に応募し、新国立美術館、都立美術館でお粗末な作品を 人目に曝しています。
人生は一度きり、結果にこだわらず、やりたかったことは残さずやってみるつもりです。
五つ星レストランの料理よりも舌になれしたしんでいるお袋の味の方が勝るもの。私にとっての島暮らしとはそういうことでして、老いてからの島暮らしは尚更のことです。島を自分の庭内と思って暮らしております。


島においでよ  佐藤誠二
島においでよ
リュックサックひとつ
スニーカー履いて
浮き世を忘れ
思い切り島ぼけしよう

島においでよ
なまっちろい肌はいけねぇよ
色白は七難隠すって
そんなのずるいじゃないか

ビキニになろう
フンドシひとつになろう

厚着も、厚化粧も体に良くないよ

そんなに警戒心いっぱいにして
心の内を押し隠そうとするから
疲れ果ててしまうのだよ。
心の閂を取り払い
生身の心をさらけだすがいい
島人は誰も傷付けたりはしない
島人は警戒心など持ち合わせていない
あけっぴろげで明け透けの心
少々無粋なところもあるけど
それがとても心地良いのさ

島人は太陽に肌をさらし
口紅をひかず
スッピンの顔
輝く瞳

島料理はいささか雑で荒っぽい
豚肉の塊には焼き残しの体毛
一切れは拳大
手掴みでお食べなさい
腕ほどもある豚骨にかぶりつけ

屈託した顔つきは
島人とのゆらいにはそぐわない
かぶりつけ、豚骨に
食い千切れ、豚肉を
喉を鳴らして呑み込め、豚肉の塊を
胃袋が体毛つきの肉塊に
びっくり仰天するかもしれないが

島魚みしょれ
魚骨が喉に突き刺さったら
御飯の塊を呑み込め
イモの塊を呑み込め

ナリ味噌、ナリがゆ、鶏飯、豚骨、豚耳ぐわ
みんな美味い美味しい
手づかみで取って食らいついて
ふうゲップして
ふうおならして

それで幸せでなかったら
いったい何だというんだ。

山坊主になろう。
海坊主になろう。

気持ちだけでも入道雲に負けちゃいけねぇよ
気持ちだけでも鯨に負けちゃいけねぇよ

夕日をあびて渚を素足で駆け抜けよう
スカートの裾をたくし上げて波と戯れよう

大和人よ、心をいやしにおいでよ
本土人よ、腑の洗濯においでよ
内地人よ、脳味噌を入れ替えにおいでよ

いえいえ
そんなごたいそうなことではなくて
ぶらっと
ふらっと、おいでよ。
いもれよ

*みしゅれ…おあがんなさい
ナリ…蘇鉄の実
いもれよ…おいでなさい

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