第37回(2003) 詩部門佳作入選 三田麻里

第37回(2003) 詩部門佳作入選 三田麻里

三田 麻里
1954年神奈川県生まれ。
アクアの会同人。詩集『かなしみ通り』。介護職員。


受賞のことば

昨年から特養老人ホームで介護の仕事を始めました。今まで事務系の仕事が殆どでしたので、そのハードさは私の想像以上でした。ただし、ホームの人たちとの触れ合いは、楽しいです。あとは自分の体力が頼りですが、この仕事をしていなかったら、あの作品は決して生まれなかったことでしょう。みなさまに感謝しています。ありがとうございます。


人とうさぎと白文鳥  三田 麻里

だめである
今日は 人ではだめである
一日 うさぎと思って暮らす
ベランダを走る
物陰にじっとする
餌を食べる そこらじゅうに糞をする
寂しくなると 窓から家の中を見る
家の者がテレビを見たりしゃべっている
時々、振り向いて
わたしの名を呼んでいる

少し調子が良くなったので また人に戻る
朝の八時に仕事に行く
夜の七時に帰ってくる
夕飯を作る 子供と夕飯を食べる
洗たく物を取り入れる たたむ
洗い物をする 風呂に入る
洗濯をする 干す
少し本を読む
寝ることにする

人は 体ばかりが疲れていく
明日も明後日も こうなのかと思う
来年も再来年も こうなのかと思う

明日は白文鳥と思って暮らすことにする

朝からピィピィ鳴く
「キュウちゃん おはよう」と鳥籠から出してくれる
家の者の肩に乗る
食事のごはん粒をもらう
飽きたら 飛んで別の部屋に行く
餌と水はいつも新しく替えてくれる
夜は家の者と一緒に風呂に入る
これも悪くない

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