創刊号巻頭詩 「再現」 城侑

投稿日時: 2019/09/01 yashiba

再現  城侑

わかりました
わかりました
あなたはぼくが泥棒するのを見ていたという
 のですね
だから泥棒だというのですね
わかりましたよ
あなたが見たとおり
ぼくのまえでぼくがいかに泥棒をして
ぼくがどのようにして泥棒になったかにつき
 再現して見せてください

どのあたりで
ぼくは泥棒になったのですか
この村のはずれに立ってる石地蔵のあたりで
 ですか
それとも切株に腰をおろして
木を伐りはじめたそのときからだというので
 すか
またはぼくがぼくの家を出たときすでに泥棒
 だったというのでしょうか
または または
昨夜ぼくが寝床の端で眠っていたとき
いやその前日
家出をしたまま帰ってこない母に手紙を書い
 ていたとき
そのときすでに泥棒だったというのでしたら
そのところもやってください
はじめからやってください

泥棒とはどんなものか
だれが見てもわかるように
やってください!
やってください!
ぼくだって このぼくの目で客観的に確かめておく必要が
 ある
どこがどの程度に悪いものか憎いものかを


だからすぐにやってください
もし腰つきが憎いのだったらすぐにも伸ばし
 てみせましょう
もし 目つきが悪いのだったら心を優しくも
 ちましょう
とにかくぼくがやったとおりに再現して見せ
 てください
ぼくがやったことなのですから
あなたにやれないはずはないし
ぼくがやる一部始終をつけ狙っていたのです
 から


ぼくよりうまくやれるはずです
ぼくより上手にできるはずです

『詩人会議』1963年1月号